「私が変なのかな?」の自己不信・ガスライティングという心理的虐待

何故True Selfの本音を信じられなくなるのか?

子供の頃は自分の本能に忠実に従えるのに、何故、歳を取るにつれてTrue Selfの本音を信じられなくなるのでしょうか・・?

2026年7月末、35℃超えの猛暑日なのに、屋外でもマスクを外さない大人達。私からすれば自殺行為としか言いようがありません。2019年以前には、こんなことはしていなかったことすら、すっかり忘れているかのようです。

一方で、中には可哀そうなことにマスクを外せなくなってしまった子供もいますが、ほとんどの子供たちはマスクなどとうの昔に「こんなの無駄」「したくない」と自分の本音に忠実に生きています。

自分の感覚を素直に信じられなくなるのには様々な要因がありますが、その一つの「ガスライティング」について今回は取り上げます。

反論しづらい微妙な否定「ガスライティング」

ガスライティング・Gas Lightingとは、演劇及び映画の題名「ガス燈」に由来します。一言で言えば「相手の現実感覚を意図的に狂わせようとする」心理的虐待の手口です。

このガスライティングは、「馬鹿!」「のろま!」などの明確な暴言ではなく、以下に挙げるような、反論しづらく、しかし微妙に相手の心と尊厳を否定するものです。しかも日常的に再々繰り返されるため、じわじわと自己否定感を植え付ける、大変罪深い行為です。

「ガス燈」では、夫から妻に行われましたが、親がまだ判断力が未熟な子供に対して行うことも多く、そして被害を受けた子供は、成人後も長年氣づけないままになりやすいのです。

ガスライティングの4段階の具体的メカニズム

子供を含む他人は「自己演出の道具」でしかないナルシシスト親は、このガスライティングを多用します。また、コントロール欲求の強い強迫型・不安型・依存型の親もガスライティングを行うことがあります。

何故かというと、子供が独自の感覚や感情、欲求を出すこと即ち自我そのものが、彼らのコントロールを脅かすからです。巧妙な自我潰しの一環です。これは無意識に行われます。そして良心の呵責を伴わないからこそ繰り返されるのです。

典型的なメカニズムは以下の4段階です。

1. 現実の否定・記憶の書き換え(Denial & Rewriting)

「そんなこと言ってないよ」
「そんな出来事はなかった」
「お前が勘違いしている」
子供が明確に覚えている出来事さえ、平然と否定する。或いは「なかったこと」にして無視・スルーする。

目的:子供の「自分の感覚を信じる力」を根本から揺るがす。

2. 感情・感覚の無効化・病理化(Invalidation & Pathologizing)

「大げさだよ」「気にしすぎ」
「お前は被害者意識が強い」「後ろ向きだ」「変わってる」
「そんなに怒ることじゃない」「敏感すぎる」「お前のメンタルが弱い」

目的:子供が自分の感情を「悪いもの」「異常なもの」と認識するように刷り込む。
これにより、子供は「感情を感じること自体を恐れる」ようになる。

3. 孤立化と混乱の増幅(Isolation & Confusion)

「他の人はみんなお前のことを心配してるよ」
「お前だけがおかしいと思ってる」
矛盾したことを平氣で言い、子供が「私が記憶違いなのかな?」と自問する状況を意図的に作る。

目的:外部の検証を遮断し、子供を心理的に孤立させる。

4. 依存の強化と自己欺瞞の内面化(Dependency & Internalization)

繰り返し行うことで、子供は徐々に「自分の判断力を疑う」 ようになる。
最終的にガスライティングを内面化し、自分で自分をガスライティングする状態(自己不信、自己否定)が完成する。

目的:支配を維持し、子供のTrue Selfを封じ込める。
⇒False SelfがTrue Selfを覆い隠してしまう。何が本当の自分かがわからなくなり、自己決定ができなくなる。

自分の感覚を信じられなくなると外側からの「これが正解」に依存する

上記の例は、言葉を使ったものですが、
他にも「笑いながら傷つくことを言う」⇒「お前は冗談もわからないのか」の言い逃れや、
必要なものを買い与えないなどの不作為⇒「私の存在は粗末なものだ。私のニーズは軽んじられるものだ」という核心的羞恥(core shame「私は欠陥品だ。恥ずべき存在だ」)の刻み付けも、ガスライティングに含まれます。

このガスライティングが罪深いのは、「そんなことない!」と子供が反論できず、「そうかもしれない」と真に受けて信じてしまい、子供の心に内面化してしまうからです。

そして自分の感覚を信じられなくなった子供、そして大人は、「外側から与えられる正解」に依存するようになります。

「皆そうしてる」「TVがそう言ってる」「世間ではこうだ」など、これらは何ら正しさの保証にはならないのに、自分で「これは本当かな?」「いや、おかしいよ」と疑問を抱き、自分で調べ、考えることを放棄してしまうのです。洗脳され放題になります。

「これが正解」に依存すると、「自分は正しいことをやっている」つもりになり、脳からドーパミンという快感物質が放出され、そして偽の安心を得てしまいます。そしていつまでたってもマスクを外そうとすら思い浮かばない、極めて奇怪な状態が延々と続きます。自分から「カオナシ」になる、不健全なFalse Selfを生きてしまいます。

回復への道・自分の感覚を「良い悪い」の評価抜きに受容するところから

これまで見てきたとおり、ガスライティングの最大のダメージは「自分の感覚を信じられなくなる」ことです。それでも平時は、表面上は何となくやり過ごせるかもしれません。

しかし、自分の感覚を信じられず、どうして自己決定ができるでしょう?自己決定ができないというとは、他人に脳みそを乗っ取られ、他人に振り回されっぱなし、境界線を乗り越えられっぱなしになることです。自ら自由を放棄することです。自由を放棄して尊厳も何もありません。

ですから回復のためには、まず日常において、自分の感覚・感情をそのまま感じ、受け止めることから始めます。ここでも、腹側迷走神経の活性化が基礎となります。「氣持ちいいね」「美味しいね」「ホッとするね」「ヤダったね」等、感情そのものを評価抜きにそのまま感じ、抱える習慣です。

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同じ「何てことしてくれる!」であっても・感情所有の責任

心理学では「感情所有の責任」と言いますが、「嫌なことは嫌だと感じて良い」「この感情は自分のもの」と所有してこそ、「何てことしてくれる!」と怒ることができます。

この「何てことしてくれる!」は被害者意識でもありますが、自分の尊厳を守り、抵抗するための動機に昇華すれば、「私は被害を受けっぱなしの人間ではない」になり得ます。

アドバイスされたことを行動に移さず、同じ愚痴を繰り返しているだけなら、「嫌だと感じてはいても、感情所有の責任を果たしてはいない」になっているかもしれません。被害者意識が状況依存的なものに留まらず、「私は悲劇のヒロイン」のアイデンティティになってしまいかねません。

ガスライティングを事実ベースで認め、怒り直し、自己慈悲で包む

子供の頃に「あれはガスライティングだったかもしれない」と思い当たる節があれば、「あの時は反論できず、でも何だか微妙に嫌だったこと」をまず書き出してみます。

「あんたは変わってる」「被害者意識が強い、後ろ向きだ」「世間ではこうだ。世間は認めない」「言わなかったあんたが悪い」「大して好きでもなかったんでしょ」等が典型です。同じ「変わってるね」でも、他人からならただの感想や、親しみの表現になっても、親から言われれば「私の感覚がおかしい」と内面化しかねないのです。

また不作為によるガスライティングは、記憶に残りづらい上に、子供の頃は「それが普通だ」と思い込んだかもしれません。しかし、大人になった自分の目で「我が子を大事に思っていたら、あんなことをするかな?」と自問するとわかりやすいでしょう。

「自分の本音の感情や意志を、正当な根拠なく封じ込められた」経験を、辛くはあっても、事実ベースとして認めるのが、True Selfの回復への重要な道筋です。

そして何より大事なことは、大人になってから、「なんてひどいことをされたんだ!」ときちんと怒り直すことです。子供の頃のよくわからないまま抑圧してしまった傷つきを、一旦表に出してあげます。

心の中でぐるぐると思うよりも、誰もいない場所で、はっきり声に出すとより効果的です。トラウマは身体に記憶されているからこそ、声帯を振るわせて声に出し、身体を使って解放するプロセスが大変重要だからです。

そして最後に「ヤダったね・・よく我慢したね」「よく言えたね」「もっと言ってもいいよ」等、自己慈悲で包みます。これをすることで、「傷ついても、私は私をケアできる」その自己像に上書きする、回復への道を一歩一歩進むことができるでしょう。

【音声版・境界線とは「No」を言うこと・流されない生き方のために】


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【音声教材を聴くことによって得られる効果】

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【全6回のテーマ】

第1回  結果を負うのは自分しかいない。「No」を言わなければ「Yes」と言ったと見なされる (約17分・無料で公開します)

🔗第1回 要約・氣づきメモ

第2回 「No」を言いづらい時、何を恐れているのか (約17分)
第3回 「人は安心の名の下に自由を手放す」責任と結果予測 (約14分)
第4回  速い思考と遅い思考・現実を見ることと選択肢を広げること (約18分)
第5回  思春期の頃、親に対して「うるせえ!クソジジイ!クソババア!」と言えましたか? (約15分)
第6回  境界線の内側には良いもの、外側に悪いもの・境界線は真の自由と自立のために (約16分)

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