感謝という境地④ 思い通りにはいかないこの世とぶれない心

イライラするのは期待通りになっていないから

感謝という境地③の「『私に不快を味わわさせないで!』を望んでいる間は」にも書きました通り、人生の主体性を失うこと、即ち責任を放棄し、被害者意識に陥りがちな間は、感謝の境地には当然ながら至れません。

昨今よくありがちな「権利意識は強いけれど、義務と責任からは逃げる」態度は、感謝という境地とは正反対のものでしょう。

しかし私たちは、思いもよらなかった不都合で不愉快なことがあると、「何でこんな目に遭わなきゃならないの!」と被害者意識に陥りがちです。

自己中心性とは、必ずしも単なるわがままとは限りません。「世界は自分が考えたとおりにあるべきだ」が自己中心性です。

期待や、理想なども、実は自己中心性の温床になり得ます。イライラするのは自分の期待通りに物事がなっていないからです。そしてそれはあくまで「自分の」期待なのだと、通常人は意識していません。

だからこそ、「普通はこうでしょ!」になります。その「普通」は「自分が『これが普通』と思っていること」に過ぎません。

そう思ってはいけないわけでもないですし、ついイライラするのが人間の様相です。期待はいつの間にか、無意識のうちに持つものでだからです。

その時「私は何にイライラしているのだろう?」と自分に問いかけると、自分がいつの間にか持っていた期待と、そしてその通りになっていない現実とのギャップに気づけます。これが客観視、物事をありのままに見る姿勢です。

「世の中間違ってる!」だとか、「こんな目に遭わなければならない私は可哀そう」だとか、いずれにしてもジャッジのみに自分を留めてしまうと、それは自己中心性に囚われた、どこか幼いあり方と言えるでしょう。

失望も落胆もやるせなさも、生きていれば当たり前です。最初から斜に構えて「こんなもんでしょ」も、どこか拗ねています。毎度毎度似たようなことに傷つき、憤慨するのが「そうとしか生きられない自分」です。その自分を否定せず、受け入れればこそ、

「こんな奇想天外なことが起こるなんて、本当に人生ってわからないものね」
「世の中いろいろな人がいるのね」
「ほんと、退屈しないわ・・・!」

と面白がれる心のゆとりを生むでしょう。

感謝の境地とは、自己中心性とは正反対の、謙虚さのあらわれです。傲慢な人が、どんなことにも感謝の心を持つということはありません。

「人生を楽しむことが大切よ。大切なのは、それだけ」オードリー・ヘップバーン

オードリーの人生は、その映画のように必ずしもいつも、華やかで順風満帆ではありませんでした。母親との葛藤や、二度の離婚など、私生活では苦難を伴っていました。

この「人生を楽しむこと」は、「楽しいことをする」ことではありません。

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自分の期待を裏切られることが起きた時にも、楽しめる、心のゆとりのことを指します。実はそうたやすいことではありません。

報われなくても大事だからやる。打算のなさが感謝と言う境地に

例えば、お客さんのことなど何も考えていない、上に取り入ることだけが上手な人が出世して、お客さんや部下のことを真剣に考える人が出世しない、などということは、どんなところでも起こっているでしょう。

「上に取り入ることだけが上手な人」の部下になった人は、さんざんな思いをします。愚痴のひとつもこぼしたくなっても当然です。

この世は算数通りにはいきません。

そうした状況になった時に、ただ愚痴を言い続けるだけに終わるのか、愚痴が出たとしてもなお、できるだけ巻き込まれないための、自分の引き出しを増やす機会にするかは、自分次第です。

そして算数通りにいかない、つまり努力は報われないこともあります。その時に「報われないのならやめる」のか、「報われなくても、これが大事だから、やる」のかが人間の品位を左右します。
この品位の高さが、自尊感情の高さにつながっています。

「報われないのならやめる」は、「許してくれなければ謝りたくない」と同じです。それは打算であり、取引です。

ぶれない自分とは、頑固一徹で「こうあるべき!」を振りかざすことではなく、むしろ引き出しを多く持ち、柔軟性を持って事に当たれる態度です。あたかも武道の達人のように、軸は決してぶれないけれど、どこから敵が襲い掛かってきても柔軟に対応できる、そんな態度です。これはスキルであって、誰かにできて、誰かにはできない類のものではありません。

感謝という境地は、この不断の心がけの結果得られるものであり、また簡単に失ってしまうものでもあります。損得勘定や打算で生きていては到達できません。また単なる自己犠牲や、まして「いい人でいること」とも違います。「本当に大事にするべきことを、大事にした」と言い切れる生き方をしたかどうか。それは他人が外側からわかることでもありません。

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第1回 自尊感情とは何か。何故大事か
第2回 全ての感情を受け止め、否定しないことの重要性
第3回 「何が嫌だったか」を自分に質問する。目的語を補う
第4回 期待通りに成らない現実を受け入れざるを得ない時
第5回 小さな一歩を踏み出す・最低限のラインを決める
第6回 人生が変わるのは知識ではなく氣づき

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    自尊感情(self-esteem)とは「かけがえのなさ」。そのままの自分で、かけがえがないと思えてこそ、自分も他人も大切にできます。自尊感情を高め、人と比べない、自分にダメ出ししない、依存も支配も執着も、しない、させない、されない自分に。