①子供のための親ではなく、親のための子供・親の有害なコントロールとは

スーザン・フォワード著「毒になる親」の姉妹編

ダン・ニューハース著「不幸にする親 人生を奪われる子供」はスーザン・フォワード著「毒になる親 一生苦しむ子供」の姉妹編とも言える本です。「毒になる親」は、日本でもベストロングセラーになり、「毒親」という言葉が今では一般化しています。

本書の原題はIf You Had Controlling Parentsで、直訳すると「あなたの親がコントロールする(支配する)親だったら」です。親が如何に子供をコントロールし、それにより子供は成人後にどのような問題が生じ、そしてどのように親との関係性を見直し、自分を癒していくかが書かれています。

今回私が「毒になる親」ではなく、「不幸にする親」を取り上げた理由は、こちらの方が日本人の現状により即していると判断したからです。

「毒になる親」で取り上げられているアルコール中毒の親や、性的虐待をする親は、日本人の中では少数派でしょう。しかし多かれ少なかれ親の「コントロールしたい欲」に翻弄され、それが成人後も影を落としている日本人は、本人の自覚の有無に関わらず相当数いる、否寧ろ、そうでない人はほぼいないと思います。

人は「自分事」と思わないと、中々本気になりません。「不幸にする親」の方が、「これは私のことではないか?」と気づきやすいのではないかと思った次第です。

そしてこの項では、まず親との関係性を本格的に見直す前のチェックと、「いきなり本丸に突入しない。親の問題に取り組む前に、自分の自尊感情を高められるところから高める」重要性について書いていきます。本書では序章と第一章に当たります。オリエンテーションのようなもの、と考えて頂ければと思います。

「私は親にコントロールされ、そのために人生にひずみが起きているのではないか?」

本書で言う「コントロール」とは、子供が「して良いことと悪いことの区別をつける」「適切な自制心を身に着ける」ためのものではなく、子供にとって不健全で過剰、そして有害なものです。

序章では、自分の親がこの有害なコントロールをしていなかったかどうかを振り返る、65項目のチェック項目が挙げられています。その内のいくつかを抜粋します。

【チェック項目】

●あなたは子供の頃

・親の言うことに疑問を投げかけたり、同意しないことは許されなかった。

・親に励まされたりほめられることはほとんどなく、けなされてばかりいた。

●過去を振り返ってみると、あなたの親は

・あなたのことを「バカ」「醜い」などと罵った。

・あなたのことを身体的・性的に虐待したり、またはそれらの行為をほかの者がしても手をこまねいていた(庇い、守ろうとしなかった)。

●あなたは大人になってからよく、次のように感じることがある

・完全主義的で、いつも何かに追い立てられているような気がしていて、めったに安心したり満足することがないように感じる。

・本当の自分を知っている人はあまりいないように思う。

●さらに、大人になってからのあなたは、

・人と対立することが心配で、そういう場面を心に思い描いてくよくよ考えることがよくある。

・人との関係ではいつも他人のニーズを優先してしまい、自分を見失うことがよくある。

・人からほめられても言葉通りに受け止めることができない。

・他の人には自分にない自信があるように感じる。

・親しい人の愛情を試すようなことをする。

・他人は自分を傷つけたり、利用しようとするに違いないと思う。

●あなたは大人になってから、親のことで次のように感じることがある

・親は本当のあなたを知らない。

・子供時代、あなたの家には様々な問題があったのに、親はあたかも何事もなかったかのようにふるまい、さも楽しい親子関係があったかのように言う。

・親があなたに会いに来ることを想像すると緊張する。

・自分が親のように行動していることに気づくとゾッとする。

・親との接触を、一時的に減らすか断ちたい。

著者は「65項目の内、22項目以上該当するなら、コントロールばかりする親の元で育った可能性が高い」としています。

勿論、該当する項目は少ないに越したことはありません。ただ、仮に1項目であったとしても、それが「自分の人生に今なお悪影響が及んでいる」のなら、そのひずみを正す作業が必要になるでしょう。

大事なことは、「過去を蒸し返して被害者意識に浸ること」では決してなく、「子供の頃に受けた親からのコントロールの影響は、自分の想像以上に強く、大人になってからの自分の生活のひずみとして現れる」のを、まず認めていくことです。

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それを認めてこそ、知らず知らずのうちに作られたひずみを一つ一つ修正できます。ただこれも、努力と根気の要るもので、自分の人生を心から大事にする気持ちと、そして本書でも指摘されていますが「子供の頃に受けたコントロールは自分の責任ではない。しかし大人になってからの自分の選択や行動は、自分に責任があり、親には責任がない」の責任感が不可欠です。

心が健康な親VSコントロールばかりする親

本書の中では整理と理解のために、「心が健康な親VSコントロールばかりする親」という章題が付けられていますが、実際には、白か黒かではなく、グレーゾーンが非常に大きいです。またその時の親の経済状態、人間関係によっても左右され、そのしわ寄せが子供に来ることもあります。

心が健康な親は、自分は親から望まれて生まれてきた、と子供に自然に感じさせ、子供の人間性を尊重し、子供は自由に親に質問したり、親とは反対の意見を述べることができ、どんな感情でも受け入れてもらえ、励まされます。親の子育ての態度は一貫していて、家庭の中はユーモアや明るさ、温かさ、成長、学びがあります。そして親は「今だけ・金だけ・自分だけ」ではなく、社会全体の責任について、幅広い見方を伝えます。

コントロールばかりする親はその逆です。親の意見への反論や、自分の主張が、子供の成人後でさえも頭からはねつけられたり、家庭の中で笑いや温かさがない、外食や旅行に連れて行ってもらっても「嫌ではなかったとしても、大して楽しいと感じられなかった」とか、世間体が子供の考え、希望よりも優先されている、そうしたことが起こりがちです。

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簡単に言えば、心が健康な親は、子供のために親が存在し、かつ、それを親の喜びとしているのに対し(子供に「親にしてもらっている」と感謝できる)、コントロールばかりする親は、親のために子供が存在しています。子供が親の世間体の犠牲になるのは、親の虚栄心のために子供が使われています。子供が自分の虚栄心を満たさず、世間体の邪魔と判断されると、親は途端に無関心になり、子供を「いないもの」として扱ったりします。

コントロールばかりする親に育てられた子供は、心のバランスが崩れやすく、またものの見方がゆがんでしまうことがあります。心が繊細な子供ほど影響は強く、生命はバランスを取らないと生きていけないからこそ、どこかに、何かにしわ寄せが行き、それが本書で言う「5つのゆがみ」として現れます。

子供の心に生じる5つのゆがみ(解説は足立による補足込みの要約)

1.「権力」や「能力」についての見方のゆがみ

自分の能力に対して、実際よりも過小評価したり、卑下したり、逆に他人を圧倒する程強大だと錯覚する。自信のなさのため責任から逃げたり、他人の優れた面に過剰に嫉妬したり、「常に自分が一番偉い」でなくては気が済まなかったりする。

2.感情や感覚、願望に関するゆがみ

喜怒哀楽の感情を素直に感じられず、恥じたり恐れたりする。感情は「好き・嫌い」や「どうしたいか。どうしたくないか」に大きく関わるので、結果自分の願望がわからなくなる。「自分がどうしたいか」ではなく「人から『こうするべき』と指示されたこと」に従っていればいい、という生き方になってしまい、自分の人生を生きられない。

3.考えのゆがみ

自分の言い分を親が尊重しないと、自分の考えに自信が持てなくなる。また逆に、親の独断的なものの見方が子供に移ってしまい、自分もすぐに断定的な結論を下したがる。様々な角度から検討できなくなったり、他人の違う見方を「そういう考え方もある」と受け入れられなくなる。

4.人間関係に関する感覚のゆがみ

親しくしたいのに近づけなかったり、信頼に値しない人を盲目的に信頼したり、逆に他人を全く信頼できなくなったり。他人を自分にとって脅威か、反対に「救ってくれる」かで推し量ってしまう。

5.アイデンティティに関する感覚のゆがみ

子供の直感、主体性、ニーズなどが親によってけなされたり、無視されたり、軽んじられると、自分はいったい何者かがわからなくなる。人は内側から出る直感や、外からの指図ではない「自分がこうしたい」という主体性をもって、外界に触れ、外界との接触によって自分の輪郭を明らかにしていく。アイデンティティに対する感覚がゆがむと、自分自身と健全な関係を築けず、「あるがままの自分」を大事にできない。


これらのゆがみはいくつかが重なり合っているものです。また、完全に心が健康な親がそもそもまれな以上、こうしたゆがみが全くない人もまたいません。

そしてこうしたコントロールの結果、子供は「言いなり良い子ちゃん」(日本人は学校教育のせいもあって、このケースが最も多いかもしれません)や、「反抗ばかりして聞く耳を持たない」「依存症を含めた現実逃避に走る」「強迫観念的な頑張り」などに陥りやすくなります。

反抗期らしい反抗期がなかった人ほど無用な罪悪感を感じやすい

「良い子」とは「大人、特に親にとっての都合の良い子」です。子供は親から承認してもらいたいがために、殊に真面目で気持ちの優しい子供ほど「親にとっての都合の良い子」への道を、何の疑問も持たずに邁進してしまいます。

繰り返しますが、「自分の親は、私に過剰で有害なコントロールをしてきたのではないか?」と振り返るのは、大人の自分がいつのまにか抱えたひずみを正し、今現在の自分自身、そして周囲の人と健全な関係を築くための大切なプロセスです。

しかし、「親のことを悪く思うべきではない」「親に感謝するのが当たり前」「自分の育った環境を否定したくない」など、真面目な「良い子」ほど、そうした思いが湧き上がるかもしれません。この振り返りの作業は、殊に思春期の反抗期らしい反抗期がなかった人ほど、ブレーキがかかるものでしょう。本来は無用な罪悪感に苦しめられるからです。

「当時は反抗したくても、親に押さえつけられたり、言いくるめられたり、無視されたり、嘲笑されたりして、真正面からぶつかれなかった。或いは逆に、親の方が弱く、自分が『親の親』をやらなければならなかった」こうしたことがなかったでしょうか?

理不尽なことに反抗できない、反抗しない、大人にとっての都合の「良い子」ほど、「良い子でなければ人に受け入れてもらえない」と恐れを抱え、自分で自分を縛り、自然で正直な自分でいることが、どんなことかわからなくなりがちです。

不完全な自分でありつつも、その自分をごまかさず、自然で正直であり、そして理不尽なことには抗える心の強さを持つこと、これが自尊感情豊かなあり方です。

思春期の反抗期にやっておくべきだった積み残し課題を、大人になってからやるのは、大人の分別を身に着けてしまっているからこそ、難しく感じて当然です。

まず日常生活の中で、ネガティブな感情を受け入れることから

上記の「無用な罪悪感」(本書では「無実の罪悪感」と表現されています)があると、この振り返りと、癒しの作業は上手くいきません。振り返りの最中「私の親は、子供の私が無知で、無力で、親を全面的に信じ愛していたのを良いことに、一体なんてことをしてくれたんだ!」と怒りが湧いてくるからです。

その怒りが、恨みや憎しみ、時には呪いにすらなるでしょう。そうした感情を抱く自分にOKを出せず、罪悪感を感じてしまうと、そこで足が止まってしまいます。足が止まるだけでなく、その自分を否定してしまったら本末転倒です。コントロールする親は、子供が親に怒りを抱くことに、実に巧妙に罪悪感を植え付けているものなのです。

親への怒りは、他人への怒りよりも根が深いです。

ですから、もし貴方がこの親への無用な罪悪感を感じるのなら、親との問題に取り掛かる前に、そのほかの日常生活で感じるネガティブな感情にOKを出せるようになることから始めてみましょう。

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生きづらい貴方へ

自尊感情(self-esteem)とは「かけがえのなさ」。そのままの自分で、かけがえがないと思えてこそ、自分も他人も大切にできます。自尊感情を高め、人と比べない、自分にダメ出ししない、依存も支配も執着も、しない、させない、されない自分に。