心配性は性分・心配性の自分とどう付き合うか

心配性を受け入れ対処する工夫

実を言うと私も結構な心配性で、例えば海外旅行に行く前は、現地の治安や衛生状態をかなり念入りにネットで調べます。その割には大雑把で抜けているところもありますが。

心配性は治しようがない性分です。50年以上生きてきた私が言うので間違いはありません。そしてまた、心配性でない人より悩みは多くなるでしょう。ですので心配性であることを受け入れた上で、どう対処するかを考える、それが「あるがままの自分を大切にする」の一環です。

これは体のことに置き換えると、少食の人は少ない量で栄養価の高い食べ物を摂る工夫をする、或いは風邪を引きやすい人は手洗いうがいの習慣や、太陽を浴びてビタミンDを体内に合成するなど、意識的な対処をしていくのと同じです。

少食や風邪を引きやすいのが悪い、駄目ということではないのと同じように、心配性がネガティブで後ろ向きだということではありません。その自分とどう付き合っていくかの観点が大切です。

日本人は心配性の遺伝子が受け継がれているという説

ところで、日本は他の国と比べて格段に災害が多く、また、島国なのでよその土地に逃げることができません。ですので、日本人は他の民族と比べ、心配性の遺伝子がより多く引き継がれている、という説があります。

遺伝子が引き継がれるのは、その種がより多く生き延びるためです。日本人の多くが心配性でなかったら、災害に対する備えをしようとはしなかったでしょう。そうすると、日本人はどんどん死んでしまい、生き延びていけません。

心配性は、勤勉や協調性と同じく、日本人の民族性のひとつと捉えると、少し楽になるかもしれません。

心配性を慎重さに生かせば長所に・反応的にならない自制心

無病息災という言葉を踏まえて一病息災とも言われます。全くの健康体の人より、「一病」ある人の方が却って健康に氣を使い、息災であるという意味です。

またお金の話で「ちょっと足らずが丁度良い」とも言われます。お金が潤沢にあるより、困窮しない程度、惨めな思いをしない程度にお金が少し足りない方が、頭を使って工夫をしますし、お金のありがたみを忘れません。なまじ小金があるがばかりに人生が狂ってしまった例を、ある程度の年齢の人なら見聞きしているでしょう。お金があるから良い、ないから悪いとも言いきれません。

同じように心配性も、前もって念入りに準備・予防する慎重さに生かせば長所になります。

目先の不安に反応的になって、よく考えずに飛びついてしまうのが良くない結果を生んでしまいます。つまり自制心と客観性、思考力があって初めて、心配性を慎重さに生かせるのです。心配性だけでなく、怒りっぽいとか、すぐ焦ってしまうなども自制心が上手く働かないと反応的になり、良い結果を生みません。

自制心、客観性、思考力はいずれも脳の前頭連合野が担います。大脳の前の方、おでこのあたりです。前頭連合野の完成は25歳頃と遅く、衰えるのは真っ先です。前頭連合野は一度完成してしまえば良いものではなく、その後もずっと使い続け鍛え続けないと、使わない筋肉が衰えるのと同じで使えなくなってしまいます。自制心とは後天的なもので、思いやりや勇氣と同じく、一生意識的に鍛え続ける必要があります。

他にも、先のことを考える結果予測や、相手の言動の真意を考える想像力、「この服は素敵だけど、買ったところで着る機会がないな。だから買うのはやめておこう」などの計画的な判断も同じ前頭連合野が担います。ただただ我慢するのとは違い、理性的な自制心がある人が「思慮深い人」「慎み深い人」と評されます。

自尊感情豊かに生きるとは、自分の良心、価値観、信念、品位に基づいた「自分がどうしたいか」のアクセルと、この自制心というブレーキのバランスが取れている状態です。

次善策、三善策を考えると同時に積み残し課題にも目を向ける

上記の慎重さは、困ったことが起きないように予め手を打つ態度ですが、実際に困ったことが起きた時、パニックにならない自制心が心配性の人には殊の外必要になるでしょう。繰り返しますが、自制心は後天的な鍛錬の賜物で、「私は自制心がないんです」は何の言い訳にもなりません。

「わあ!困った!どうしよう、大丈夫かな」という感情はどうしても出てきてしまいます。それを自分が受け止めた上で、どうしていくかを考える、それも一つの解決策に固執するのではなく、次善策、三善策を考える頭の体操ができるとパニックになりません。

例えば会社が倒産しそう、リストラが始まった、そんな時に常日頃から「会社なんていつなくなっても不思議ではない」と慎重に考え、「いつ会社の外に放り出されても、何とか食べていけるスキルを身に着ける」心構えで毎日仕事をしていた人は、「これが潮時」と判断して自分から会社を辞める決意ができます。リストラをすると、有能でやる氣のある人から見切りをつけて辞めていくのは、いざという時に踏み切れる自信を養ってきた結果です。

そこまでの準備ができていなかった場合、「リストラされたら、会社が倒産したらどうしよう」と不安に囚われてしまっても不思議ではありません。ただ一方で、今の日本は慢性的な人出不足ですから、仕事のえり好みさえしなければ何らかの職には就けますし、いざとなれば生活保護もあります。

なんとか会社に残ることを最善策とするなら、リストラされるかどうかの結果がわかる前から、他の仕事を探してみるのが次善策、条件に合う仕事が中々見つからない時のことを考えて家計の見直しをする、預貯金に余裕がなければ、家の不用品で売れるものはメルカリなどで売る、時間があって副業が許可されていれば、ネットで単発のアルバイトをする、いよいよの場合は「いざとなれば生活保護」の心づもりをするのが三善策です。これくらいのことを考えられると、いきなり「もう首をくくるしかない」と思いつめなくてもすむでしょう。

「困った時には最善策のみに固執せず、次善策、三善策を考える」習慣があれば、心配性が高じて「こうならなければ人生終わり」にはなりません。この思考も上述した前頭連合野が担います。

とは言っても、「リストラされても生活保護を受ければいいや」と開き直って、自分のスキルを向上させなくても良いことには勿論なりません。

「泥棒を見て縄を綯う」ということわざがありますが、用意できてなかった縄は何だったのか、それがその人の積み残し課題です。ただ「言われたことだけこなして毎日が無事に過ごせればよい」では、仮に新たな就職先を見つけられても、そこの会社が経営難になれば、またリストラ要員になってしまうでしょう。もうリストラされたくないのなら、その心構えを改めることが、その人の「用意するべきだった縄」になります。

全てにおいてバランスが取れている人はいません。人は何かに偏りがちで、平和な時はそれでやり過ごせても、危機の時には通用しなくなります。その「通用しなかったこと」が自分の積み残し課題です。危機の時にようやく、「何が積み残し課題だったか」が浮き彫りになるのかもしれません。

だからこそ、「私に積み残し課題はありません!」は思い上がりであり、誰しも多かれ少なかれ、平時は周囲の人が目をつぶってくれたり、自分の預かり知らぬところでカバーしてくれたりしています。「言われたことだけこなして毎日が無事に過ごせればよい」はその典型中の典型でしょう。

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「視野を広げてよく考え行動に移す」性分に反応的になるか、上手く付き合えるかの別れ道

今回は日本人に多いであろう心配性について取り上げました。

心配性に限らず、性分とはそうそう変えられないものなので、それを受け入れ、自制心を持って生かしながら、良い結果に結びつける意識的な努力をすれば、自分を責めることなく自尊感情豊かに生きられます。

心配性な人は未来に意識が向いているので、過去の「困難を乗り越えてきた経験」を思い出してみるのも、この意識的な努力の一つです。

即ち意識的な努力とは、これまで書いてきたとおり「視野を広げてよく考え行動に移す」に他なりません。そしてこれは、誰かにできて誰かにはできない類のものではなく、誰でも心がけ次第でやれるものなのです。

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第1回 自尊感情とは何か。何故大事か
第2回 全ての感情を受け止め、否定しないことの重要性
第3回 「何が嫌だったか」を自分に質問する。目的語を補う
第4回 期待通りに成らない現実を受け入れざるを得ない時
第5回 小さな一歩を踏み出す・最低限のラインを決める
第6回 人生が変わるのは知識ではなく氣づき

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🔗第1回・要約・氣づきメモ

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    生きづらい貴方へ

    自尊感情(self-esteem)とは「かけがえのなさ」。そのままの自分で、かけがえがないと思えてこそ、自分も他人も大切にできます。自尊感情を高め、人と比べない、自分にダメ出ししない、依存も支配も執着も、しない、させない、されない自分に。