「親を好きではない」「親を嫌い」の本音に正直に

思わぬことでわかる「長い間見て見ぬふりをしていた本音」

クライアント様の声「セッションを受けて(50代女性・コロナワクチンを巡る親との断絶)」のクライアント様が、その後も氣持ちの整理のためにセッションを申し込まれました。(そのクライアント様には記事にする許可を頂いています)

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「もう実家には帰省しない」と心に決めたものの、30年以上年に二回帰省を続けていた彼女にとって、この正月を一人で過ごしたことがやはり遣る瀬無かった、想像以上に辛かったとのことでした。

2022年まではまだコロナが5類に下げられていなかったので「今の世の中では仕方がない」と自分に言い聞かせることができても、5類下げ以降も「この遣る瀬無さがずっと続くのか」との思いが湧き上がり、改めて「娘の私に死ぬまで会わなくても構わないから、自分たちはワクチンを打ちたい」と言われたも同然だったことへの悔しさ、情けなさが湧き上がったとのことでした。

彼女はご両親と断絶したのみならず、懐かしい故郷、そして正月の家族との団欒をも失ったのです。覚悟の上とは言え、実際に体験すると思っていた以上に辛かった、ということはよくある、また無理からぬことでしょう。

私たちのやり取りの中で、ふと「私は長い間『親を嫌ってはいけない』と自分を縛っていた」と洩らされました。私が「ということは、もしかすると実際には、親御さんを大して好きではなかったのかもしれませんが・・。本当に心から好きな相手には『嫌いと思ってはいけない』などと考えませんから」と告げると、びっくりした顔をされ、しばらくの沈黙の後「ああ、そうかもしれませんね」と得心されたようでした。

そして「私は長い間、自分の本音を見て見ぬふりをし、『好きでいたい』を『好きなんだ』と偽ってきたのかもしれません」と感慨深けに仰いました。

「親を好き」「親を好きではない」「親が嫌い」どれがしっくりくるか

それから私は、「『親を好き』『親を好きではない』『親が嫌い』の内、どれがしっくりくるか、声に出しても出さなくてもいいので、自分に言ってみて下さい。一番無理がないのが○○さんの本音です」と伝えました。彼女は声には出さずにこのエクササイズをした後「『親を好きではない』『親を嫌い』の両方ですね。その中間かもしれません。『親を好き』だと、凄く違和感があって、胸が苦しくなります」と答えられました。

そして「好きじゃない相手にわざわざ関わる必要はないですよね。好きになれなかったのは残念ですけれど、仕方がありません」と仰いました。

私は「『親を嫌いだ』と正直になれるのも勇氣が要りますよ。私が学生の頃のある習い事の先生が、『僕は親父が嫌いだった』とはっきり仰ってました。学生の頃にはよくわかりませんでしたが、生徒さん達の前ではっきりそう言えるのは、『取り繕った自分でなくても良い』と自己受容ができているからですね。そこに見栄とか体裁が働くと、中々公言できないでしょう、まして生徒さん達に向かって。自分の心の傷を、自分を憐れまずに言えるのは、その傷と共にある自分、それも込みの自分と思えればこそですね」と申し上げました。

そして懐かしい故郷に帰ることはなくなっても、子供時代の情操を育んだ故郷の自然豊かな風景は、心の中に消えずにあること、また「やはり私は自然の風景に癒される」とのことでしたので、意識的に自然に触れる機会を設けること、そして「正月を家族の団欒抜きに、どうやって一人で過ごすか」は今後の課題として取り組むことなどを確認しました。余り正月らしいことはせずに、普段通り過ごすのも一つのやり方ですし、動画視聴や読書など「普段やれないことを思い切りやる」も一つです。

子供の頃の本能と大人の理性との相克

子供が親を慕うのは本能です。どんな子供も、基本的に親を好きでいたい、そして親から愛されたいと願うもので、それがかなえられない時に非常に葛藤します。「あの上司が嫌い」「困った部下に手を焼く」などの他人への葛藤とは全く次元が違います。

そしてまた私たちは、歳を重ねるにつれ、人間関係選びの動機が変化していきます。子供の頃は「氣が合う、話が合う。一緒にいて楽しい」で仲間を作ろうとします。感情と本能だけで、それ以上のことは考えないのが自然でしょう。

大人になると、まず第一に人間性、そして価値観や信念、知性、感性、品位や教養、行動力などを加味し、即ち本能だけでなく理性も使って人間関係を選ぶようになります。普段は余り意識してはいないでしょう。これらが余りにかけ離れている相手とは、最初から中々共感は出来ず、付き合うにしても浅い付き合いに自ずとなっていきます。

分別盛りの大人になってから、自分の親の人間性を知ってしまう、子供の頃にはわからないままだったけれど、実は酷いことをされていたと後から氣がつくと、却って辛さが増すものです。他人になら「あの人、結構腹黒いのよ」と思えるようには、親に対しては簡単に認めたくない心理が働くからです。また付き合いが長い関係性ほど「その人にとって良かった時期」(これもあくまで主観に過ぎませんが)を基準に考えがちなため、「この人、こんな筈じゃなかった」と今現在の事実を自分から否定してしまいます。

この葛藤は、本能と理性の相克と言っていいかもしれません。

自分が悲しみを抱えて生きて行く力が弱いと、本能に引きずられて以前と同じように見て見ぬふりをしてしまいます。悲しみに耐え、少なくとも耐える力を養おうとし、そして「現実を直視した方が、その時は辛くても自分を偽らず、裏切らず、親から死ぬまで心を抉られない、自分を守って大事にする人生を歩める」と葛藤を乗り越えらえると、それは理性の勝利になります。

「精神的に家を出る」「親の支配からの卒業」は一生の内に何度でも

親からの分離・自立は、幼少期、思春期、成人する頃のみならず、一生の課題なのでしょう。親御さんの人間性が思いやりに富み、子供の自立を励まし喜び、その上で「子育ては終わっても、一生家族であることには変わりない。何かあったら力になる用意はいつでもしている」親御さんならば、世代間の価値観の違いなどでぶつかり合うことが仮にあったとしても、その親子関係は本当に恵まれています。ここまで理想的な親子関係の方が、現実には稀かもしれません。

特に親から意図的に支配され続けてきた人にとっては、「精神的に家を出る」「親の支配からの卒業」は一生の内に何度でも起こりうることで、「まだ完全にはやり切れていなかった自分」を責める必要は全くありません。

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寧ろ上記のクライアント様のように、「この正月の遣る瀬無さ」を一つの契機として、再び「私は親の支配から卒業する」と心に決めた方が、今後の自分の人生を無駄にしないでしょう。

「もうこの人達には愛想が尽きた」も、分離の一つの形態です。ごく普通の良識ある、殊に分別盛りの中年になった子供から愛想尽かしをされたとしたら、それがその親の人生の成績表です。子供ほど親を愛し庇い、信じようとする存在はいません。子供の方が親に愛想尽かしをするのは、長い長い間の見て見ぬふり、親を庇う心理、忍耐が尽きての結果です。子供の寛容さに胡坐をかいてやりたい放題をするのか、「我が子から愛想を尽かされるほど情けないことはない」と我が身を省みるかは、これもまたその人本人にしか選べません。反省は誰もがすることではないのです。

また表面的には親に頼っているようで、実は親への復讐をしている例もあります。例えば親に金銭的にたかり続けて感謝もしなければ返済もしないのは、子供の頃に押さえつけられてきた親への復讐の可能性もあるのです。しかしそれでは、その場その場の留飲は下がるかもしれませんが、何と言っても本人が自立できず、品位を下げ、自分で自分を牢獄に閉じ込めてしまっています。結局は親の支配から卒業できていません。

繰り返しになりますが「私は親が嫌いだ」に正直であることにも勇氣が要ります。そしてそれを理解できない人は世の中には少なくないので、私の習い事の先生のように必ずしも公言しなくても良いかとは思います。「親を好き」と「親を嫌い」の両方がある人もいるでしょう。それもまた、正直な自分の本音です。その本音に正直になった上で、消してはしまえない悲しみに埋没はせずに抱えて生きる、それもまた人間だけが持つ、そして外側からはわからない強さなのだと思います。

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第2回 全ての感情を受け止め、否定しないことの重要性
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第4回 期待通りに成らない現実を受け入れざるを得ない時
第5回 小さな一歩を踏み出す・最低限のラインを決める
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