「お金は魔物」というよりも・お金を嫌ってしまったエピソード2つ

「お金が欲しい」と思いながらお金を嫌っていないか

人間の三大悩みは、お金、健康、人間関係と言われます。普段弊社サイトの記事では、人間関係の悩みについて投稿していますが、今回は久しぶりにお金について取り上げます。

余程のお金持ちで、お金があるがばっかりに、しょっちゅう借金を申し込まれたり、月末のたびに担当セールスさんたちから売り上げの協力を依頼されたり、親戚からやっかまれたりでもしない限り、大多数の人は「もっとお金が欲しいなあ。収入が増えると良いなあ」と望んでいるのではないでしょうか。

自分でも努力してるし、そう無駄遣いしているつもりはないのに、お金が入ってこないか、入ってもなんだかんだで出て行って手元に残らない、その場合は「お金が欲しい」と思いながらお金を嫌っていないかを振り返ってみるのもいいかもしれません。

「そんな馬鹿な。お金が入ったら嬉しいよ」と思うのが当然です。しかし、人間は複雑なものです。本音の本音では嫌っている人との縁を自分が切れず、しかもしばしばそれに氣づくまいとします。つまり自分でも氣づかない矛盾を抱えています。

生まれた時からお金を嫌う人はいません。生まれつき人間嫌いの赤ちゃんなどいないのと同じです。人生の途上で、お金で嫌な思いをすると、「お金を扱ったその人のあり方」ではなく、いつの間にかお金を嫌ったり、恐れたりし、そして自分では氣づけないのです。

以下に、具体的なエピソードを二つ挙げます。

エピソード1「お金なんか入らない方が良かった」

どんな人も或る程度の年齢になれば、直接間接問わず「なまじ小金を持ったばかりに、人心が狂った」人の例をいくつか知っているでしょう。

ある女性の生まれ育った家庭は、決して裕福ではなく、幼い頃は2DKの公団住宅に住み、母親は内職をして家計を支えていました。その頃は一家で外食をすることなども滅多にありませんでした。独身だった伯父が、時折子供たち二人を、車を持っていない両親に代わって、ドライブや食事に連れ出してくれました。

父親の努力の甲斐あって、後に一軒家を建て、また時代も良かったのでしょう、丁度リーマンショックの直前に父親は定年退職しました。

そのため、二人の子供が大学を卒業し、自分達のためだけにお金を使えるようになると、特に母親の方が、悪く言えば「札束で顔をはたく」ようになりました。次から次へとお金のかかるお稽古事をするようになり、ちょっとした人間関係のトラブルがあるとすぐに辞めてしまいました。

母親は高い楽器を父親に買ってもらったのに、そのお稽古事をほんの数年で辞めてしまいました。そして父親がそばにいるのに、娘に向かって「もし、あんたがお金に困ったら、この楽器を売ったらいいよ」などと言うのです。娘は内心「そのお金を稼ぐために、お父さんがどれだけの思いをしなきゃならないのよ」と情けなく思いました。

そして「昔公団に住んでた時の方が、お金はなくても幸せだった。お父さんもお母さんも、なまじお金なんか入らない方が良かった」と思うのです。

これが、彼女にとってのマイナスのアファメーション(自己宣言文)になってしまいました。「お金が両親の心を狂わせた⇒お金は入らない方が良い」という暗示になったのです。

上述した通り、お金が人心を狂わせる例は珍しくありません。しかしこれが遠い他人や親戚ではなく、親きょうだいだとインパクトが強くなるため、「世の中そんな人もいるよ」と距離を置いて捉えられなくなります。母親の態度に情けなさを深く感じたのは、彼女の良識があればこそでしょう。しかし脳は大変素早く反応するので、「母親の感謝のなさが悪い」ではなく「なまじお金が入るからだ」になってしまったのです。

もし母親が、父親の労働の対価に対して深く感謝できていれば、昔よりも経済的に余裕ができたからと言って、このような態度をとることはありません。即ち、お金のせいではなく、真の原因は母親の不遜さにあります。

また、更にこの暗示を解くために、「お金が入らないままだったら、両親は良い人間でいられたのか」を想像してもらいました。傲岸不遜の裏返しで、卑屈になったり、嫉妬深くなったりしたかもしれません。お金が入ったために思い上がって不遜になる人が、お金さえ入らなければ、謙虚で感謝に満ちた人間でいるということはありません。

元々その人の心に持っていた種が、お金という肥料を与えられて芽が吹き茂ってしまったのです。この種も、「お金を自分と世の中のために有効に活用する」種であれば、お金が入ればその芽が吹きます。

このような頭の体操は、意識しないと中々やりません。「お金なんか入らない方が良かった」を自分に言い続けてしまい、そして自分の人生に「お金が入らない。入ってもいつかなくなる」を実現させてしまいかねないのです。

エピソード2「お金儲けは嫌なこと・辛いこと」

ある男性は、会社員だった頃、その会社の役員が「取引先を泣かせればいいんだ」と言っていたのを聞いて、それがトラウマになってしまいました。まだ30代の初めだったので、役員に向かって何か言うことも出来ず、ただ黙って聞くしかありませんでした。

営業の仕事は嫌いではなかったものの、自社の利益を出すために取引先に理不尽な思いをさせなければならない。役員は口で言うだけで、取引先に恨まれるのは現場の人間です。モラハラやコンプライアンスという言葉もまだ浸透していない時代でした。

彼は良心の呵責に耐えられなくなり、また他の要因も重なって、数年後にその会社を退職し、独立起業しました。営業ノウハウは実践で身に着けていたので、自信がなかったわけではありません。ですが自分の好きな仕事をしている筈なのに、思うように業績は安定しませんでした。

彼は「お金儲けは理不尽な嫌な思いをさせること、自分にも相手にも辛い思いをさせること」という刷り込みが、思いのほか深かったことに氣がつきました。確かにそのような「誰かに泣く思いをさせて」儲けている会社は少なくありません。ブラック企業が典型ですし、コロナワクチンで赤字が黒字になった利権病院などもそうでしょう。しかし、全ての事業者がそうだというわけではありません。

彼とのセッションの中で「質の良い商品やサービスは量産できない。そのため余り安い値段は着けられない」という話に自ずとなりました。私が「例えば京都の俵屋旅館さんは、一泊7万5千円からですね。総客室数18室と、大きな旅館ではありません。それでも江戸時代から300年続いています。お客さんは『ぼったくりだ!』とは思わず、納得して泊まっているのでしょう。リピーターも多いようですし。大したものですね」などとお話しました。

彼の価値観は「質の良い商品・サービスを、適正価格で売りたい。そしてお客様にも『充分その価値はあった。ぼったくりでもなく、安かろうでもなく、リーズナブルだ』と思っていただきたい」とのことでした。そしてそれは、例えば俵屋旅館などで実現されています。俵屋旅館の取引先が「泣く思いをさせられる」では、質の良い食材やその他の製品を、納品し続けることはできません。

従業員もそうでしょう。サービス業では質の高いサービスを提供できるようになるために、長く勤めてもらう必要があります。人が育つには時間ががかるからです。「ここでずっと働きたい」と従業員が思えばこそ、「流石ですね」と言っていただけるサービスを提供できます。

このように「取引先を泣かせる」お金儲けではないやり方の例を、具体的に脳にインプットして上書きすることが大事です。「そんな会社ばかりじゃないと思うよ」だけでは、具体的なイメージが湧きません。実際に「こういうやり方なら納得できる。自分もやってみたい」と感情が動くためには、具体例をイメージするのがコツです。具体的に掘り下げ、新たな「違う例」で上書きしないと、やはり「お金儲け=嫌な思いをさせること」のイメージが中々払拭できないのです。

この件も、エピソード1と同じく、お金儲けそのものが悪いのではありません。それに携わる人間の品位、人間性の問題です。

お金自体は中立・良くも悪くもない

上記のエピソード以外にも、「親からお金をたかられた」「親に必要な物を買ってもらえなかった」「お金で悔しい思いをした」などの経験があると、それを引き起こしたその人に責めを負わせず、「お金のせいで」になっているかもしれません。

よく言われる「金権政治」なども、お金や権力が「悪い」のではなく、それを扱う政治家の資質の問題です。

「お金は魔物」という言葉があります。それは決して間違いではありません。お金に何かの恐れを抱くと、私たちは「お金は魔物だね」などと言ったり思ったりします。

そしてまた、お金は火にも例えられます。今の生活では、実際の火を扱う機会はめっきり減りましたが、それでも煮炊きや、お湯を沸かしたり、暖を取ったりに使います。電氣のない時代は灯りとしても使われていました。人の生活に欠かせないものですが、一方で扱いを誤ると、火事や火傷の原因になります。

お金も火も、それ自体に良い悪いはありません。中立です。大変有用で有難い存在にするかどうかは、本来なら扱う人間側の問題なのに、いつの間にかお金や、火のせいにされてしまいます。

こうしたことは当たり前のようですが、改めて振り返っておかないと、いつの間にかお金を恐れ、嫌う原因になりかねないのです。

自分の価値観に沿ったお金の稼ぎ方や使い方とは

今の社会では、お金は私たちの生活とは切っても切れないものです。お金の心配をすることに疲れると、貨幣経済ではなかった、狩猟採集で生活をし、そして1万4千年もの間戦争をしなかった縄文時代の人を羨ましく思ったりします。

言うまでもなく、貨幣は貧富の差を生む一因ともなり、人間のエゴに乗っ取られるとこの世の苦しみの種にもなります。貧富の格差は戦争の遠因です。

お金についても、自分がどのような価値観を持ち、どのようにお金を稼ぎ、また使えれば、自分も周囲も幸せなのかを、この機会に改めて振り返って頂ければと思います。

私自身は、今のグローバル経済、カタカナにすればかっこよく聞こえますが、実際には植民地経済は間違いだと思っています。人件費の安い途上国で、適切な対価を払って雇用しているのならまだしも、奴隷同然にこき使って物を安く大量に作らせる。大量に残った在庫は廃棄する。このような「誰かが泣く思いをする」経済のあり方は間違っています。

国内においても、派遣労働者が多く、給料が上がらず、結婚もままならない社会のあり方も。そしてまた、「これは間違っている」と自分が思えば、それを正すための行動に移さないと、結局は口だけの他人事に成ってしまいます。即ち言行一致、首尾一貫性です。

日頃からできる範囲で勉強して、必ず選挙には行く。できる限り国産の物を買う。食品表示をよくチェックして、添加物が多い食品は買わない、等。買い物は投票と言われます。自分にお金が入ることだけでなく、適切なお金の使い方をし、それが社会全体のためになっているかを意識することも、回り回って自分のためです。

こうした日々の行動における選択こそが、自分の価値判断基準を作り上げます。言葉を換えれば自分軸です。これが強くしなやかになっている人がぶれない人です。自尊感情の豊かさは、日常の「何を買い、何は買わないか」に意識的になることからでも育てられるのです。

【音声版・自尊感情を高める習慣・6回コース】

1回約20分、6回コースの音声教材です。

第1回 自尊感情とは何か。何故大事か
第2回 全ての感情を受け止め、否定しないことの重要性
第3回 「何が嫌だったか」を自分に質問する。目的語を補う
第4回 期待通りに成らない現実を受け入れざるを得ない時
第5回 小さな一歩を踏み出す・最低限のラインを決める
第6回 人生が変わるのは知識ではなく氣づき

第1回目は無料で提供しています。まず一週間、毎日聴き、ワークに取り組んでみて下さい。その後更に日常の中で実践してみたくなったら、6回分の音声教材(税込5500円)をご購入下さい。

🔗第1回・要約・氣づきメモ

6回分ご購入をご希望の方は、以下のフォームよりお申し込み下さい。

    弊社よりメールにて、振込先口座をご連絡します。振込み手数料はお客様負担になります。入金確認後、6回分の音声教材とPDFが表示される限定公開のURLとパスワードをメールにてお送りします。

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    生きづらい貴方へ

    自尊感情(self-esteem)とは「かけがえのなさ」。そのままの自分で、かけがえがないと思えてこそ、自分も他人も大切にできます。自尊感情を高め、人と比べない、自分にダメ出ししない、依存も支配も執着も、しない、させない、されない自分に。