精神的疲労で「何もしたくない」時・新たな生存戦略を学習する脳

まず「やる氣を奪う」物理的要因を排除

「何もしたくない、やる氣が起きない」には様々な原因があります。こうした不調はまず体の方の原因を取り除き、その上で心の持ち方に取り組むのが順序です。

中々わかりづらい原因に、例えば冷え性や貧血、スマホの見過ぎで脳が疲労している(「スマホは大人のおしゃぶり」と言われているらしく、意識して「見ない時間」を増やすぐらいで丁度良いでしょう)、これと同様でTVやゲームなどで情報過多になって脳がパンクする、それから意外かもしれませんが、減塩のし過ぎもやる氣のなさに繋がります。

江戸時代の拷問の一つに「塩抜きの刑」がありました。塩を抜くと反抗する氣力が失せ、要は腑抜けになって自白しやすくなります。私たちの体の70%は水ですが、充分な塩(精製塩ではなく、天日塩など自然の塩であることが重要です)がないと、細胞間に電氣が通りません。私たちの体には神経細胞が張り巡らされていますが、神経細胞に電氣が通らないと心身が活性化しません。

理科の実験で、塩水だと電氣が通り、真水や、砂糖水では電氣が通らないと勉強しました。人間の体は海水と同じ濃度の塩分を保たなくてはいけないのです。

ビタミンやミネラルのサプリメントを摂っている方もいらっしゃるでしょう。それも悪くありませんが、まずベースとして質の良い天日塩を摂る、一説には1日20gまでは摂って良いそうなので、減塩が習慣になってやる氣が出ない方は、一度ご自身で良く調べ、体の調子を見ながら少しずつ塩の摂取を増やされてはと思います。特に少食の方は、必然的に塩分摂取量も減りますので、起床時や入浴後などに塩を少量舐めると良いと思います。私も心がけています。

他にも今は大型TVが各家庭にあると思いますが、アメリカの刑務所ではTV番組を流し続けて、囚人の脳の前頭連合野を衰えさせ、思考能力を奪い、大人しくさせています。塩抜きの刑と目的は同じです。前頭連合野は「事実は何か」「自分がどうしたいか」を考える客観性と自発性の要です。高齢者がただでさえ認知能力が落ちるのに、一日中TVにお守りをさせていたらみるみる内に脳が衰え、洗脳されやすくなってしまいます。「TVを見ると馬鹿になる」は真実なのです。

「やる氣を奪う」物理的要因を意識的に日常の中から排除していく、これも「自分を大切にする」一環です。

精神的疲労で「何もしたくない」時

上記は精神的な原因というより、身体的、物理的要因で「やる氣が起きない」例を挙げました。

他に精神的な理由で自分ではわかりづらい例は、「無難な方に流される」人生になってると、いつの間にか「やる氣が起きない」に陥ります。この件は以前の記事に詳述しましたので、そちらをご覧ください。

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これらの原因ではない、精神的なストレス、ショック、或いは環境の変化で精神的に疲れてしまった場合の心の持ち方について、以下に書いていきます。

精神的に疲れて「何もしたくない」時は、どんな人にも訪れます。失恋の後、精神的に疲れてしまった、毎日の仕事はミスをしないようにするので精一杯だった、新たなチャレンジをする余力などなかったといった経験をされた方も少なくないでしょう。また離婚は結婚の何倍も疲れるとは、よく言われているところです。

心の動揺が激しいとは、「普段は使わない脳の神経回路」をフルに使っている状態です。「普段使わない体の筋肉」を使えば筋肉痛になりますし、疲労が溜まりやすいのと同じことが脳に起きています。筋肉の疲れなら許容しやすくても、精神的な疲れはいつ回復するかがわかりづらく、まるで自分が怠けているかのように思ってしまうかもしれません。

ここで中々やる氣が起きない自分を責めてしまうと、折角脳が回復しようとしているのに、更に自分でダメージを与えてしまいます。

脳のインプットと定着は同時にはできない

ところで、生物の二大使命は「まず生き延びる」「子孫を残す」ことです。人間の脳もその使命のためにあります。脳は生まれてから死ぬまで「どうやったら生き延びられるか」の生存戦略を学習し続けます。

勿論、この生存戦略が社会的道義的に正しいかどうかは別の話です。例えば「自分が楽して得ができる方をひたすら選び、責任は他人に押し付ける」なども、その人の脳が学んだ生存戦略です。

そして知識情報でも、経験でも、何かの技術でも、脳にインプットすることと、脳に定着するのは同時にはできません。脳への定着、つまり必要なことを記憶するのは、私たちが休んでいる時、主にレム(REM:Rapid Eye Movement 急速眼球運動)睡眠の時です。受験生ほど眠らなくてはならないのはこうした理由です。

また、眠らなくても、研修やセミナー受講直後、映画を見た後などはしばらくボーっとする、すぐに仕事や勉強は出来ず、休憩したくなるのも同じ理由です。眠ってはいなくても、レム睡眠と同じことを脳がやろうとしています。

私は小さなお子さんを塾やお稽古事漬けにするのは、基本的に反対しています。脳の成長が著しい幼少期ほど、ボーっとする、休む、よく眠る、そして遊ばせる必要があります。

そしてインプットしたことではなく、脳に定着した記憶ー知識でも技術でも考え方でもーがその人が本当に使える知恵、生存戦略になっていきます。「わかる」「知っている」ことと、「使える」ことの違いとは、脳に定着したか否かと言っても良いでしょう。

環境が変化した時は「大して何もしてないのに疲れる」

新社会人一年目の時は、誰しも「大した仕事はしていないのに疲れる」ものです。勿論新たな環境に対する緊張もありますが、それ以上に、学生から社会人への意識の切り替えという目には見えない、しかし一番大きな学習を脳がしているからです。転勤や転職の経験がある方もいらっしゃると思いますが、恐らく新社会人一年目よりかは疲れなかったのではないでしょうか。職場や仕事は新しくても、社会人としての意識はもう学んでいるからです。

それでもやはり、転勤、転職、異動、引っ越し、或いは結婚など、それまでと大きく環境が変わると「大したことはしていないのに疲れる」「休みの日はひたすら寝る。遊びに行く氣力もない」。それは、新たな環境での生存戦略を、脳に定着させようとして、体の方をある種の強制終了をさせているからです。「脳に定着させなければならないことがたくさんあるのに、これ以上出歩かれて新たな事柄をインプットされてはパンクする」から強制終了して休ませています。

精神的なショックを受けると疲れるのも、同じ強制終了を脳がかけています。その時無理に再起動させようとすると、パソコン自体が壊れてしまうようなものです。

休んでいる最中に「インプットされたもの(この場合は精神的なショック)」を生存戦略という記憶に変えて脳に定着しようとしているのです。

より高く広い視野の生存戦略を学習するために

精神的なショックを受けた時には、充分休む必要がある理由について述べてきました。そうは言っても仕事や家事、子育てで忙しく、まとまった休みが取りにくい場合は、「今はそういう時期」と受け入れて、こまめに自分なりのリラックス、リフレッシュの時間を工夫して取って頂ければと思います。デジタルデドックスを意識するだけでも違うでしょう。こういう時こそ、「入れなくていい情報は入れない」ように是非心がけてみて下さい。電車に乗っている時や、会社の休憩時間中は目をつぶる、もしくは自然の風景を眺めるなども効果的です。

そして実はここからが本当の本題ですが、「受けてしまった精神的なショックを、どのような生存戦略にするか」が最も肝心です。平たく言えば、人は苦労さえすればいいわけではなく、そのせいで心がひねくれたり、僻みっぽくなる人もやはりいるからです。それもその人の生存戦略ではあるのですが、自分や周囲を真に幸福にするものではありません。一時しのぎの憂さ晴らしの方法を身に着けてしまっただけなのです。

「『それを乗り越えた自分』からのアドバイス」のワーク

どんなに苦しいことでも、いつかは終わります。ただその渦中にいると「これがいつまで続くのか」と不安になり、出口のないトンネルの中にいるような氣分になるものです。

かつてそうした経験をした自分に、今の自分ならどんな言葉をかけてあげるか、まずそれから練習してみます。「あの頃は一生懸命ではあったけど、やっぱりまだまだ子供だったなあ。視野が狭かったなあ。もっとこういう風に考えて、こうすれば良かったなあ」と思うことが、誰にでもあるでしょう。そう思えることが、その分当時の自分よりかは成長した証です。優しく言ってあげることもあれば、苦笑混じりに「あんたちょっといい加減にしなさい!」と叱りたくなることもあるかもしれません。

私の例で言えば、会社員時代は毎月同じ日に給料が振り込まれることを、まるで当たり前のように思っていました。それはどんなに思い上がっていたことか、そのくせ会社にブチブチと文句ばかり言っていて、今なら「ちょっとそこに座んなさい!」と当時の自分に喝を入れたくなります。それも退職して自営業にならなければわからないことでした。

「当時よりも視野が広がった自分で、愛情をもって過去の自分にアドバイスをする」練習をしたら、今度は未来の自分が今の自分を振り返る、をやってみます。時間のスパンは自由に決めて構いません。

信じる、信じないの話ではありますが、「この世は仮の世。あの世が本当」とか、「人は魂を磨くためにこの世に生まれてくる。魂を磨けるのは肉体がある時だけ」などとも言われています。私たちが死ぬ時は、あたかも「脚本無しのドラマ」が「はい、カット!」の掛け声がかかって終わる時。そして撮影スタジオの外に出ながら「ああ、終わった、終わった」「いっぱいとちったけど、何とか終えられた~」とホッとしている時です。

そして撮影が終わった自分から、今まさに精神的ショックを受けて、ぐったりしてしまったり、動揺が激しかったり、「大丈夫かな、乗り越えられるんだろうか」と不安になってる自分に、どんなことを伝えてあげるか。それを乗り越えた自分は、何を学んだのか、何が一番大事だったのか、そうしたことを自分に質問して、愛情をこめて伝えてもらえたらと思います。すぐには言葉が出てこない場合も、「未来の自分から今の自分を見る」その視点に立つだけでも何かが変わってくるでしょう。

こうしたワークをする氣力もなければ、「いつかこれを乗り越えて、よりよく生きるための生存戦略を学習する」ために、脳が頑張ってくれている、そのために体を休めている、と思うだけでも構いません。

意識的に頭を使い、被害者意識に陥らない

どんなことでも、私たちにはより高く広い視野を得る機会にできます。その知恵を得る力は誰にでもあります。ただそれを意識的にやることが肝心です。辛い出来事が起きた時、このように意識的に頭を使わないと、ともすると私たちは被害者意識に陥りがちです。「あの人が悪い。私は悪くない」そして「自分さえ、自分の家族さえ、今日明日明後日さえ無事ならよい」の狭く小さい視野の生存戦略になりかねません。それでは精神的なショックを乗り越え、成熟した大人になったとはやはり言えないのです。

【音声版・自尊感情を高める習慣・6回コース】

1回約20分、6回コースの音声教材です。

第1回 自尊感情とは何か。何故大事か
第2回 全ての感情を受け止め、否定しないことの重要性
第3回 「何が嫌だったか」を自分に質問する。目的語を補う
第4回 期待通りに成らない現実を受け入れざるを得ない時
第5回 小さな一歩を踏み出す・最低限のラインを決める
第6回 人生が変わるのは知識ではなく氣づき

第1回目は無料で提供しています。まず一週間、毎日聴き、ワークに取り組んでみて下さい。その後更に日常の中で実践してみたくなったら、6回分の音声教材(税込5500円)をご購入下さい。

🔗第1回・要約・氣づきメモ

6回分ご購入をご希望の方は、以下のフォームよりお申し込み下さい。

    弊社よりメールにて、振込先口座をご連絡します。振込み手数料はお客様負担になります。入金確認後、6回分の音声教材とPDFが表示される限定公開のURLとパスワードをメールにてお送りします。

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    生きづらい貴方へ

    自尊感情(self-esteem)とは「かけがえのなさ」。そのままの自分で、かけがえがないと思えてこそ、自分も他人も大切にできます。自尊感情を高め、人と比べない、自分にダメ出ししない、依存も支配も執着も、しない、させない、されない自分に。