親に自尊心を傷つけられて生きやすくはならない・2つのチェックリスト

自分の親が生きづらさの原因だと中々認められない

スーザン・フォワード「毒になる親 一生苦しむ子供」の冒頭に、或る男性のクライアントが、大人になってからの自分の問題と子供の頃の父親の暴力は無関係だ、と主張するシーンがあります。

「そりゃあ、子供のころ親父にはよくぶたれたけれど、それは僕が間違った方向にいかないようにしつけるためだったんですよ。そのことと、僕の結婚が破綻したことが、いったいどう関係があるんですか」

スーザン・フォワード「毒になる親 一生苦しむ子供」

どんな子供も「自分の親は、まあまあ常識的な、思いやりのある人間だった。自分はその親に愛され、認められてきた」と信じたい、少なくともそうあって欲しいのです。誰しも「自分の親は支配欲に取りつかれていた。子供である自分はその格好のターゲットになっていた」と好き好んで認められるものではありません。葛藤耐性が低い人、また「人を悪く思いたくない」人ほどそうなるでしょう。

後述しますが、親が子供の自尊心を踏みにじるのが何故罪深いのかは、親の言動が子供の心に内面化し、低い自己評価になるからです。この内面化した親の言動は、神の声のように成人後も子供の心を良くも悪くも操ります。その内面化した言動が、子供の自尊心を健全に養い育むか、事あるごとに踏みにじって来るかで、生きづらさが変わるのは当然なのです。

「自分は愛され、大切にされるに値する」健全な自尊心・自尊感情

大人の分別を使って考えればわかりますが、他人から謂れのない嫌がらせをされたからと言って、こちらが人として価値がなく、悪いわけでは決してありません。人として愛される価値がない、ということもありません。「クソ野郎はそっちだ」と大人は判断できます。

しかしまだ自我の発達が途上の子供にとっては、「親のアンタがクソ野郎だ」とは中々思えません。氣持ちが優しい良い子ほどそうなります。口では「クソババア!」と叫んでも、「親のアンタはクソだ」と本氣で思っているわけでは必ずしもなく、「自分の言い分を聞いてほしい」「頭ごなしに叱らないで」が本音かもしれないのです。

子供によっては幼い頃「ねえ、お母さん、私のこと好き?世界で一番大事?」と何度も何度も尋ねるでしょう。「昨日も答えたでしょ!」ではなく「そうよ、大好きよ。○○ちゃんと☆☆ちゃん(きょうだいの名前)が、お母さんの一番の宝物」と繰り返し答えてあげてこそ、子供はお母さんからしか得られない愛情を受け取っていきます。

親からの無条件の愛情と、自制心や克己心、自立と自律を育む躾のバランスが取れると、少々の困難にめげてしまわず、自分のことだけではない周囲のことを考えた行動ができる、責任感の強い子供、引いては大人になっていきます。自分を信頼でき、また他人との信頼関係を育むことに躊躇しません。

この健全な自尊心・自尊感情があるから、能力を伸ばせ、成果を挙げることができます。成果によって、今後の励みにする自己承認はできます。しかし、成果を挙げられれば自尊心・自尊感情が高まるのではありません。真実は逆です。「○○すれば認めてやる」では、サーカスの獣を調教するのと同じです。

生きづらさのチェックリスト①大人としての現在のあなた

上述したことは「そんなことは当たり前」と思われるかもしれません。しかし現実には、その逆のことが頻発していて、また子供自身が氣づきません。冒頭の男性クライアントの例のようにです。以下はフォワードの「毒になる親」からの引用ですが、ご自身の「生きづらさ」に該当しないか、振り返るためのチェックシートにして頂ければと思います。

大人としての現在のあなたは、(※は足立による補足)

異性関係を含み、いつも人との関係がこじれたり、いつも相手を踏みにじったり踏みにじられたりして争いになるか。

あまり心を開いて人と親しくなりすぎると、その相手から傷つけられたり関係を切られたりすると思うか。(※「最初から心を閉ざしておいた方が楽で傷つかない」)

たいていいつも、人との関係では悪い結末を予測しているか。(※「どうせ今度も駄目だ」「もしまた、上手くいかなかったらどうしよう」)

自分はどんな人間か、自分はどう感じているか、何をしたいのか、といったことを考えるのは難しいか。(※「あなたはどうしたいの、どう思うの」と尋ねられても、「みんなが」「誰それが」と他人を主語にしたり、「君が好きなようにしていいよ」と問いに応えようとしない)

自分の本当の顔を知られたら、人から好かれなくなるのではないかと思うか。(※人から嫌われない、変に思われないために〇〇する)

何かがうまくいきはじめると心配になってくるか。自分が”ニセ物”であることをだれにも見抜かれはしないかと不安になるか。(※絶え間なく自分がしゃべり続けて、相手に口を挟まれないようにしないと不安、なども含む)

はっきりわかる理由が見当たらないのに、時どき無性に腹が立ったり、なんとなく悲しくなったりすることがあるか。

何事も完全でないと氣がすまないか。(※0か100かで考えたがる。「100ができないのなら、最初から何もしない」を選んでしまう)

リラックスしたり、楽しく時間を過ごすことが苦手か。(※現実逃避に走り、楽しんでいるとは言い難い。もしくは過集中してしまう)

まったく悪意はなく、人によくしようと思っているのに、氣がつくと「まるで自分の親みたい」に行動していることがあるか。

これらは〇か×かよりも、「10段階で今はいくつか」「子供の頃や若い頃に特に強かった傾向はどれか」を振り返ってみるのも良いでしょう。

ある女性は、10代後半から20代の初めの頃、の「最初から心を閉ざしておいた方が楽で傷つかない」を自分に言い聞かせていたそうです。中年になった今、その頃の自分が「可哀相だった」と思うとのことでした。本当は人が好きで、仲良くしたかったにも関わらず、自分にそう言い聞かせ続けて、生きやすくは決してなりません。自分が引き裂かれそうになって当然で、それがまた他の問題を引き起こしていたのだろうと話してくださいました。

生きづらさのチェックリスト②現在のあなたと親との関係性

以下は大人になったあなたと、親との関係性についてです。生きづらさの原因の全てが、親にあるとは限りません。その人本人の資質、努力、どのような人と出会ってきたか、学校教育や読書経験、生活習慣や食習慣等の掛け合わせです。しかし以下のようなことを親から未だにされていて、生きにくくならない方が不自然でしょう。

現在のあなたと親の関係(※は足立による補足)

あなたの親はいまだにあなたを子供のように扱うか。(※マウント取り。上から目線。過剰な世話焼き)

あなたが人生において決定することの多くは、親がそれをどう思うだろうかということが基本になっているか。(※親の顔色を伺い続ける。「親がそう言っているから」を口実にする)

親と離れて暮らしている場合、あなたはこれから親と会うことになっているという時や、親と一緒に時間を過ごした後で、精神的、肉体的にはなはだしい反応が出るか。(※ぐったりしたり、イライラしたり、氣分が落ち込むなど)

あなたは親の考えに反対するのに勇氣がいるか。(※最初から「何を言っても無駄」の諦めも含む。TVニュースの感想など、些細なことであっても親に反対することは許されない、など)

あなたの親は、あなたを威圧したり、罪悪感を感じさせたりして、あなたを思い通りに行動させようとするか。(※過剰に「心配してますアピール」をするなど)

あなたの親は、金銭的なことを利用して、あなたを自分の思い通りに行動させようとするか。(※現金のみならず、食事や旅行、米や果物を贈るなども含む。断ろうとすると不機嫌になる。また「こんなにしてやったんだから、今度はあんたが○○しろ」と脅す)

親がどういう氣分でいるかはあなたの責任だと思うか。もし親が不幸だとしたら、それはあなたのせいだと思うか。親に幸福感を感じさせるのはあなたの仕事だと思うか。(※「親の親」をさせられる。親子の逆転現象)

あなたが何をしても親は満足しないと思うか。(※「親を満足させなければならない」の不要な義務感)

あなたはいつの日か親が変わってくれる時がくると思っているか。(※「これだけ頑張っている/我慢しているのだから、もっと頑張れば/我慢すれば、いつかわかってくれるに違いない」)

このチェックリストは、もし友達が「うちの親、未だにこんなでね・・」と打ち明けたらどう思うかを想像すると、如何に受け入れてはいけないことかがわかると思います。「親御さんとは距離を開けた方が良いんじゃない?」が自然な感想でしょう。

内面化する親の言動とは

上述した本人の資質、努力、勉強、人との縁等で、親から傷つけられた自尊心をある程度はカバーすることはできます。「自分の生きづらさは親との関係性にあった」と氣づいた後、やはり自立心があり、努力と勉強を厭わない人の方が、比較的順調に癒しのプロセスを進めます。

しかしそれでもなお、内面化した親の言動を意識に浮上させ、それを改めて退けること抜きに、他の努力や勉強だけでは、真の生きやすさは得られないようです。それほど、内面化した親の言動による影響力は、無意識に刻まれて強いからです。

内面化について、フォワードの文章を引用します。

友人や教師や兄弟姉妹そのほかからけなされても傷つくことには違いないが、子供がもっとも傷つくのは親の言葉だ。つまるところ、小さい子供にとって親というのは世界の中心なのである。(略)

人間の脳は、人から言われたことをそのまま受け入れ、それをそっくり無意識のなかに埋め込んでしまう性質がある。これを「内面化」といい、ポジティブな概念もネガティブな言葉や評価も同じように無意識の中に収納される。するとつぎに、人から言われた「お前は○○だ」という言葉が、自分の内部で「私は○○だ」という自分の言葉に変換されるのである。

これは子供においては特に顕著で、親のけなしやののしりの言葉は心の奥に埋め込まれ、それが自分の言葉になって、低い自己評価や人間としての自信のなさのもとを形作ってしまう。

これは言葉だけでなく、態度、反応も内面化されます。例えば「ただいま」と言っても返事をしないなど、一見些細なことでも「私の存在はどうでもいい」とメッセージされてしまいます。知恵が廻る親は、明らかな暴言よりも、表情や声のトーン、雰囲氣で脅したり、必要なものを買い与えなかったり、「なにをそんなに悩んでいるんだ」と軽んじたりするなど、「すぐにはわからない」ように心を踏みにじります。子供が抗議すると「あんたが考えすぎ、被害妄想が強すぎる」などと子供のせいにし、子供の心情に共感したり、まして謝ったり反省したりはありません。

こうした微妙な態度による圧迫は、他人の理解を得にくい(「聞こえなかっただけなんじゃないの?」など)ので、余計に孤独を深めてしまいます。

全く無実で不要な低い自己評価は、「それにふさわしい現実」を自ら受け入れてしまいます。社会的地位が高い人が、わざわざ高いお金を払ってSMの女王に自分を痛めつけてもらうことがあります。「本当の自分はこの程度に価値がなく、その自分を確認できると安心する」本来なら、低い自己評価を正し、より高い自己評価にふさわしい現実を自分に許可しなくてはなりません。それができないと、その人は永遠に自分を痛め続けます。自傷行為を他人が直接止められないのはこうした理由です。

「自分の子供に同じことをするかどうか」問題を問題視するために

洗脳とは、無意識に埋め込まれて氣づけないことです。洗脳を解くには、まずは無意識から意識へ浮上させるプロセスが必須です。しかしその際「認めたくなかった親の支配、愛のなさ」を目の当たりにするので、非常に葛藤します。ですので、本丸の親のことに取り組む前に、日常で感じる怒りや恨みや悲しみを、否定せずに受けとめられる習慣から始めます。

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そしてあなたの親があなたにしてきたことを、唯々諾々と受け入れてはいけないと、心底腑落ちする必要があります。そのために、のチェックリストの項目を、「自分の子供に同じことをするだろうか」とシュミレーションをしてみます。子供がいない方は「いるもの」として考えましょう。そうすると自ずと答えは導き出されるでしょう。

それから自分の人生において、親から自尊心を傷つけられたことが、どのようにひずみとして現れたかを振り返ります。人間の三大悩みは、お金、健康、人間関係です。この三つのいずれか、もしくは複数に渡って問題があるとするならば、内面化した親の言動を解除できれば、どのように変化するかを自分に訊いてみます。すぐに答えが出てこなくても構いません。時間がかかっても無意識は答えを探し出そうとしてくれます。

最終的には、自分の尊厳を踏みにじり続ける親(場合によってはきょうだい)とは、距離を開ける、関わらない決断をせざるを得ないこともあります。その決断に断腸の思いをするかもしれません。大人は「或る程度のところで判断して、お引き取り頂くべき人にはお引き取り頂く」責任を果たさなければならない時もあります。横柄で困ったお客さんや、どんなに指導しても会社に迷惑をかけ続ける従業員を、どこかのタイミングでお引き取り頂くのも仕事の内なのと同じです。

そしてそれは、成熟した大人にしか果たせない責任であり、それもまた愛の形の一つです。優しい氣持ちをひたすら注ぎ続け、相手に尽くすことだけが、愛の形ではありません。

私たち大人にとって、問題があることが問題なのではありません。問題視するべきことを、私たちが逃げずに問題視しているかが問われます。そのスタートラインに立つまでが長いので、その間に問題が悪化してしまうのです。勇氣を出してスタートラインに立った時、紆余曲折はあれど、真の自分の人生を生きる道筋は既に目の前に伸びています。

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第1回 自尊感情とは何か。何故大事か
第2回 全ての感情を受け止め、否定しないことの重要性
第3回 「何が嫌だったか」を自分に質問する。目的語を補う
第4回 期待通りに成らない現実を受け入れざるを得ない時
第5回 小さな一歩を踏み出す・最低限のラインを決める
第6回 人生が変わるのは知識ではなく氣づき

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    生きづらい貴方へ

    自尊感情(self-esteem)とは「かけがえのなさ」。そのままの自分で、かけがえがないと思えてこそ、自分も他人も大切にできます。自尊感情を高め、人と比べない、自分にダメ出ししない、依存も支配も執着も、しない、させない、されない自分に。