能力、実績、評価で得た自己肯定感と自尊感情はどう違うか

能力や結果で肯定するのは条件付きで認めること

努力して能力を高め、結果を出し、そのことで評価を得て自己肯定感を持つこと、そのこと自体は悪くなさそうですが、「あるがままの自分を大切にする」自尊感情とは異なります。

自尊感情も、自分を肯定するという意味では自己肯定感の一種ですが、条件付きで自分を肯定するものではありません。

自分の仕事に対しては、能力が上がり、実績を積めば自信がつくのは当然です。しかしこのことと、自分の存在に対する肯定感は分けて考える必要があります。

誰しも歳を取れば、若い頃なら難なくやれたことが段々できなくなります。人は「少しずつ死ぬ」のです。その時何かかができる/できないで自分の存在価値を推し量ると、「もうこんな役立たずの自分は早く死んでしまった方が良い」になりかねません。

自尊感情は、こうしたことに左右されません。

能力や評価で自分を肯定すると他人と比較したり「平均値の中にいれば安心」に

よくあるご相談で「人と比較してしまう」「平均値の中にいれば安心だと思ってしまう」等があります。問わず語りにそうした言葉が出てくるのは、クライアント様ご本人が既にそれを良しとは思っていないからです。そのことに何の疑問も持たなければ、わざわざ口にすることはありません。

それは何か不自然で、一時しのぎにはなっても本来の健全な在り方ではないと、本音では知っている、その何よりの証拠です。

能力や評価は目に見えやすいです。だからこそ、人は目に見えるもので自分や他人を推し量ってしまいがちです。ただ、過去を振り返った時、心に残った出来事は、他人の能力や評価だったでしょうか?損得や打算とは関係なく、思いやりを掛けてもらったこと、或いは人としての愛らしさ、人情味、ごく普通の人ならそうした事柄が心に残っているのではないでしょうか。

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自尊とは「唯一無二の自分」と共にあること

自尊、自らを尊ぶとはこの世でただ一人、後にも先にもただ一人きりの自分を、自分自身が大切にすることです。子供の内は、そのようなことは自分ではできないので、周りの大人が子供たちを大切にしなければなりません。躾や教育はその子が将来生きていくために必要なものではありますが、飴と鞭で動かそうとするのはサーカスの獣を調教するのと同じです。

条件付きで自分を肯定するのは、結局は自分自身をサーカスの獣にしているのです。

そのことと、仕事や学業や、コミュニケーションその他何らかのスキルを、「結果からフィードバックを得て、更に良いものにしようと磨きをかける」のは別のことです。

「ブラックな自分」をなかったことにしない

自尊感情豊かに生きるとは、換言すれば「自分をごまかさない」ことです。「人の目が氣になる。人からどう思われるかが氣になる」ご相談は後を絶ちませんが、これは「ブラックな自分」をなかったことにしない、それも自分の一部だと受け入れられないと解決しません。

そしてそのことと表裏一体ですが、自分の良心に基づいた価値観・信念に沿って真剣に生きてこそです。

場当たり的に、その場その場でいい顔をする、首尾一貫性が伴わない在り方を、潔しとしない態度を取れて初めて、「人からどう思われるか」を考えなくなるのです。

「昔の恨みがどうしても消えない」ご相談もありますが、物の見方を広げてその恨みを相対化し、日常生活では恨みの感情に振り回されなくなるのと共に、逆説的ですが「人は恨みを抱えるものなのだ」と受け入れられることもまた必須です。

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「最上のわざー熟年者の祈り」ヘルマン・ホイヴェルス神父

この記事の締めくくりに、戦前戦後の日本に長く滞在し、日本と日本人を深く愛し、また多くの日本人に慕われたヘルマン・ホイヴェルス神父が晩年に作った詩を紹介します。

「最上のわざー熟年者の祈り」

この世の最上のわざは何?
楽しい心で年をとり、
働きたいけれども休み、
しゃべりたいけれども黙り、
失望しそうなときに希望し、
従順に、平静に、おのれの十字架をになう。

若者が元気いっぱいで神の道を歩むのを見ても、ねたまず、
人のために働くよりも、謙虚に人の世話になり、
弱って、もはや人のために役だたずとも、親切で柔和であること。

老いの重荷は神の賜物。
古びた心に、これで最後のみがきをかける。
まことのふるさとへ行くために。
おのれをこの世につなぐくさりを少しずつはずしていくのは、真にえらい仕事。
こうして何もできなくなれば、それを謙虚に承諾するのだ。

神は最後にいちばんよい仕事を残してくださる。それは祈りだ。
手は何もできない。けれども最後まで合掌できる。
愛するすべての人のうえに、神の恵みを求めるために。

すべてをなし終えたら、臨終の床に神の声をきくだろう。
「来よ、わが友、われなんじを見捨てじ」と。

ホイヴェルス神父「日本人への贈り物」

「手は何もできない。けれども最後まで合掌できる。愛するすべての人のうえに、神の恵みを求めるために」

こうした在り方は、最晩年になって急に取れる態度ではなく、若いころから日々積み上げてきた人生の集大成です。

自分の中の様々な「不都合な、見たくない、見栄えの悪い自分」を受け入れ認めつつ、そしてただ開き直るのでも全くなく、自分を超えた存在に思いをはせる。そしてそのことに見返りを求めない。「いい人」だと思われるかどうかなど、最初から考えない。

自尊感情豊かに生きるとは、こうした在り方なのです。

【音声版・自尊感情を高める習慣・6回コース】

1回約20分、6回コースの音声教材です。

第1回 自尊感情とは何か。何故大事か
第2回 全ての感情を受け止め、否定しないことの重要性
第3回 「何が嫌だったか」を自分に質問する。目的語を補う
第4回 期待通りに成らない現実を受け入れざるを得ない時
第5回 小さな一歩を踏み出す・最低限のラインを決める
第6回 人生が変わるのは知識ではなく氣づき

第1回目は無料で提供しています。まず一週間、毎日聴き、ワークに取り組んでみて下さい。その後更に日常の中で実践してみたくなったら、6回分の音声教材(税込5500円)をご購入下さい。

🔗第1回・要約・氣づきメモ

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    生きづらい貴方へ

    自尊感情(self-esteem)とは「かけがえのなさ」。そのままの自分で、かけがえがないと思えてこそ、自分も他人も大切にできます。自尊感情を高め、人と比べない、自分にダメ出ししない、依存も支配も執着も、しない、させない、されない自分に。