【境界線と家族】成人後の親の言いなりや依存は境界線欠如のため

実家の家族との間に境界線がない場合

今回の記事は、成人した子供が実家の親から罪悪感で操作されたり、また子供の方が成人後も経済的、精神的に自立できていないがために起こる問題を取り上げます。夫婦間、未成年の子供に対する境界線問題は、また改めて記事を書きます。

境界線問題は、家族、特に親子間こそ起こりがちです。時間の経過と共に子供は成長し、自立し、巣立っていくものと、親、もしくは親子双方が本当のところで思えていないとそうなりがちです。

境界線欠如の兆候

以下に実家の家族との間に境界線がないことを示す、典型的な兆候を幾つか挙げます。

ウイルスをもらう

実家の親との間に、感情的な境界線が引けず、感情面での分離自立ができていないと起こりがちです。感情的に癒着しているため、電話で話したり会ったりすると、恰も「ウイルスに感染したかのように」感情面で悪影響が出ます。イライラしたり、落ち込んだり、感情面での悪影響を、自分の配偶者や子供に及ぼしてしまいます。

ある一人の人が他の人との関係に影響を及ぼすようなら、それは間違いなく境界線に問題があることを示しています。あなたは自分の人生において、一人の人に力を与えすぎているのです。

誰かの影響を受けることは、私たちは誰も避けようがなく、このこと自体に良い悪いはありません。しかし、関係ない他人にまで、悪影響を及ぼしている時は、自分の境界線の柵がなく、あっても地上5㎝くらいしかなく、ある人の感情の影響をそのまま他の人に垂れ流しています。

普通の社会人なら、例えば直前まで上司にこっぴどく叱られ、氣持ちが塞ぐことがあっても、次の瞬間からは他の関係ない人にまでその感情を露わにしません。自然と切り替えています。職場では役割責任が明確なため、切り替えやすくても、実家の親と感情面で癒着しているとできなくなってしまいます。

脇役

実家の親の方を、自分の配偶者よりも重視します。親と別居していたとしても、実家の親が自分たちの家族の家長であるかのような影響力を与え、それを許し、夫婦と子供たちが「自分達の」家庭を築いている実感を持ちにくくなります。自分達夫婦で決断することでも、親の顔色を窺って決めてしまったりします。そのため配偶者や子供は、自分達は脇役であるかのように感じてしまいます。夫婦間の不信の原因にもなります。

お小遣いを下さい

なまじ実家の親が経済的に余裕があると起きがちです。家の購入や子供の習い事、果ては海外旅行まで親がお金を出し、子供たち夫婦が身の丈に合わないライフスタイルを当然のものと勘違いしてしまいます。「子供たち一家にこんなに良い生活をさせてやっていることが自分のステータス」という非常に歪んだ、誤った親の虚栄心と、それに甘んじ続ける子供たちの依存心とで、共依存関係になっています。

親の方は「今度こそうまくやってくれるだろう」と期待しつつ、失敗と無責任という名の人生をひた走る子供にいつまでも資金を供給し続けます。しかし現実には、我が子の独立を阻み、一生の不具にしているのです。

お母さん、僕の靴下はどこ?

上記と違って、子供が経済的には自立していても、生活面で実家の親に世話になりっぱなしになります。食事や洗濯物の世話を、成人後も母親の世話になる「永遠の子供症候群」です。母親が無料の家政婦になっています。一見本人たちには何の問題もなさそうですが、人はいつまでも小学校低学年のままの生活ができるわけではありません。

こうした男性と結婚してしまった女性は、夫のマザコンぶり、家事能力のなさに大変苦労することになります。独身のままだったとしても、いざ転勤になった時、或いは親が歳を取って思うように体が動かなくなった時、立ち往生してしまいます。

充分な手取り収入がないとか、家賃が負担になるなど、様々な事情で実家暮らしをするのが悪いわけではありません。だからこそ尚のこと、子供が精神的にも家事の面でも自立し、「親の保護の元にある」生活から脱する必要があります。親の方からしっかりけじめをつける、この毅然とした態度も健全な境界線を育てるために大切です。

平日は仕事が多忙な子供のために夕食を用意しても、食器洗いは自分でするとか、休日の家の掃除や買い出しは自分も受け持つとか、自分の洗濯物は自分でたたむくらいはしないと、「お世話されっぱなしが当たり前」の状況から抜け出せません。

三人だと仲間割れ

家族間で三角関係になります。

三角関係とは二人の間の摩擦を解決できず、どちらかの側についてもらおうと第三者を引っ張り込むことです。これは境界線問題です。なぜなら互いに直面するのを恐れ合っている人たちが、慰めと承認を得ようとして問題に関係のない第三者を巻き込むからです。摩擦はこのようにしていつまでも続き、誰も変わることなく、不必要に敵が作られます。

典型的なのは、母親が夫の悪口を子供、特に娘に言い続ける。父親は妻の悪口を娘に言う。娘はその場その場で目の前の相手の味方をせざるを得ず、どちらの悪口も心の中に溜まっていきます。そして「どちらにも良い顔をする」卑怯さを身に着けてしまいかねません。或いは「どちらの味方も本当はできない、したくない」と自分の心が引き裂かれてしまいます。いずれにしても、娘の人格形成に良い影響を与えません。

夫が何も言わない場合は、母と娘の連合軍が作られます。本当は夫婦が向き合う問題なのに、そのツケを子供が支払わされています。子供が「親の親」もしくは「親の配偶者」にさせられます。

母親が嫁に直接注意できず、嫁の悪口を娘に言う、というパターンもあります。

自分は何が「No」なのかを明確にし、本来伝えるべき相手に言わない、その責任を回避しています。

結局、誰が子供なのですか?

子供が「親の親」をしてしまうケースです。ごく普通の心ある子供なら、親孝行をしたいもので、親孝行を精神的な理由、もしくは他の理由でできないこと自体が悲しいのです。ですがそれは、親が子供に強いたり、期待したり、ましてできないことに罪悪感を感じさせるようなことではありません。

「子供が親の面倒を見る」場合、二つの問題があります。一つは親の方が「自分のナップザックを背負わない」ケースです。「彼らは無責任で、要求ばかりし、殉教者のごとくふるまっているだけかもしれません」

もう一つは、子供の方が「与えられるものと与えられないもの」の区別をつけていないケースです。今は親が現役の時代と違い、子供の世帯年収が低く、子供が自分たちの生活で精一杯のことも珍しくありません。「与えたいけれど与えられないもの」の限度・限界設定をしておかないと、自分たちの家庭生活を破壊しかねません。

これは経済的な事柄のみならず、精神的・時間的なことも同様です。今は親が若かった時代と異なり、女性でも管理職として働き、出張や休日出勤も珍しくなく、また出産後もフルタイムで働く人も多いです。自分の仕事と家事と子育てで精一杯が当然です。その事情を言葉で説明しても親が腑落ちせず、子供の時間を割かせようとするなどです。

だって私はあなたの兄弟でしょう

成人した兄弟姉妹間で、未成熟なまま大人になった責任感のない人が、頼れる兄弟姉妹に依存し、いつまでも家族から巣立とうとしない場合です。兄弟姉妹の誰か一人が、成人後も引きこもったまま、或いは定職に就かずに親に養ってもらっている状況だと、他の兄弟姉妹が本来は不必要な不安やプレッシャーを感じてしまいます。

親友のためにでも絶対にしないような愚かで全く助けにならないことを、兄弟姉妹にはする人がいます。「家族」であるという理由で、私たちの一番強固な柵でさえも崩されてしまうのです。

これも本人と親、そして兄弟姉妹が各々の責任範囲と限度・限界を設定することから始める必要があります。有耶無耶にして先延ばしは百害あって一利なしでしょう。

家族との境界線問題の解決

以下の項目は解決の大筋の手順です。

まず、状況を観察し、整理する

どんな問題解決もそうですが、状況を客観的に観察し、整理することから始めます。境界線問題においては、「自分の領域はどこからどこまでか。責任を負うべき範囲、できること、できないこと。親のことよりも優先するべきことは何か」をまず整理します。

親を恨む氣持ちがあるなら、「境界線の中の良いものを奪われ、外側の悪いものを押し込められた」というサインです。一体それらは何だったか、また罪悪感で操作されていないか、よくよく観察してみます。情にほだされやすく、つい頑張ってしまう人ほど要注意です。そしてこの罪悪感で操作されるパターンは、これまでも幾度となく繰り返されて来た筈です。

「No」を言う練習をし、自分の境界線を育てる

日常の小さな事柄で、「No」を言う練習をします。できるだけ小さな事柄から始め、そして常識的で思いやりのある相手を選んで練習します。断った時に、嫌味を言ったり逆切れするような人ではなく、できれば「そう、残念ね。また今度ね」と優しく言ってくれる人、そこまで優しい人がいなければ、少なくとも常識が通じる相手を探します。

詳しくは以下の記事をご参照ください。

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相手との間に「実現しないもの」を見極め、手放す

「親との間に実現しえないもの」を自分が認め、受け入れられないと、執着になり自分の首を締めてしまいます。共感、思いやり、氣づかい、言い分を受け止めてくれること、スルーされないこと、真摯な反省と謝罪、等々。まず何が自分の望みだったか、明らかにした上で、あきらめる。この順序が大切です。

その際、それが得られなかった悲しみや失望は、今後も消えないかもしれません。悲しみや失望に自分が耐えられないと、いつまででもない物ねだりをしたくなってしまいます。悲しみと失望を抱えながら、手放すことは充分可能です。この悲しみと失望が、他の境界線問題で悩んでいる人への共感の土台にもなり得ます。

そして新たな「境界線を尊重しあえる」関係性の中で、癒されていく、今はその関係性を持っていないのなら、「今後はそうした関係性を築いていく」と決意することはできます。

反応「的」にならずに対処する

私たちは皆生身の人間である限り、感情的な反応は当然あります。しかし、余りに反応「的」になると、良い結果を生みません。自分の感情は大切に受け止めながら、怒りを感じる自分、悲しむ自分、失望する自分に寄り添いながら、反応ではなく対処すると意識づけすることが肝要です。これは感情を大事にしながら、態度振る舞いにおいては自制するということです。ただ事なかれ主義で黙っていることでは決してなく、少々怖くても、はっきり言うべきことは言うという選択も含みます。

怒りはしっかり感じきりましょう。安全な、一人きりの時間と空間がある時に感じきる、或いは理解ある友人や配偶者、場合によってはセラピストやカウンセラーに聴いてもらうことも、無闇に我慢してしまわないことです。

但し、友人や配偶者に聴いてもらう場合は、予め「これこれのことを聴いてもらいたい」と打診し、相手のコンディションや時間に配慮をします。友人であれば後で食事をご馳走するくらいのことは、けじめをつける意味でやっても良いでしょう。これもまた、境界線の一種です。

そしてまた、子供にはまるで当然の権利のごとく境界線を乗り越えてくる親には、戦略的に対処する、即ち自分の頭を使わなければなりません。反応的になっている時は、感情のみに引きずられ、対処できている時は、頭を使い、腹を据えている、こうした違いをイメージできると良いかもしれません。反応している時は相手が主導権を握り、対処している時は自分が支配権を握っています。これは他の関係性でも同様です。

罪悪感は他人からの操作、自由と責任は自分のもの

上記の例で出てきた共依存者は、本人たちは愛と思い込んでいても、真実は恐れのために癒着し、しがみつき合っています。罪悪感で操作されるのは、恐れを掻き立てられています。他人が何かを恐れるように仕向けています。その多くは「自分がどう思われるか」です。これを克服するには、自発的な選択の習慣を身に着けることです。自分が心からこれが大事だと思って選択した時には、「人からどう思われるか」を既に考えていません。

また共依存者たちは、責任を取ることを極端なまでに嫌がります。共依存者への心理セラピーが滅多に奏功しないのはこのためです。責任を取ろうとせずに、境界線は育てられません。

ところで、親に感謝や恩を感じ、その恩を返したいと思うのは素晴らしいことです。そしてそのことも、自分が自由に「そうしたいから」とするものです。「喜んでもらいたい」とは思っても、「私に感謝されたい。良い子供だと思ってもらいたい」などとは考えていない筈です。それは打算であり、感謝でも恩返しでもありません。

「感謝や恩などとても感じられない。憎しみの氣持ちを露わにしないので精一杯。復讐したい氣持ちを自制するので精一杯」・・勿論、それで良いのです。自分の本音をごまかさず、その上で自制するのも、その人だけの自由意志であり、責任を果たす態度です。

親に抱く氣持ちが何であれ、「やれやれ、やっと死んでくれてホッとした」であれ、その氣持ちに罪悪感や、被害者意識を持たず、卑下したり、まして関係のない他人を羨んだり妬んだりしない。これが自分の境界線の中にあるもの、それに責任を負っている自負があるかどうか。境界線が健全なものであるかどうかは、それが問われているのだと思います。

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