「自分を大切にする」のは「この世に他人事はない」からこそ

自己中心は天動説・自尊感情は地動説

以前の記事にも「自己中心の『自分大好き』と自尊感情『自分を大切にする』の違い」を書きましたが、今回は別の角度からこの違いについて書いていきます。

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自己中心的とは文字通り、「世界の中心は自分である」という世界観です。どんな人も幼い子供のうちは、自己中心的な物の見方になっています。

子供のうちは、どんな人でも、地動説ではなく天動説のような考え方をしている。子供の知識を観察して見たまえ。みんな、自分を中心としてまとめあげられている。電車通りは、うちの門から左の方へいったところ、ポストは右の方へいったところにあって、八百屋さんちは、その角を曲がったところにある。静子さんのうちは、うちのお向かいで、三ちゃんところはお隣だ。こういう風に、自分のうちを中心にして、いろいろなものがあるような考え方をしている。

(略)

それが、大人になると、多かれ少なかれ、地動説のような考え方になって来る。広い世間というものを先にして、その上で、いろいろなものごとや、人を理解してゆくんだ。場所も、もう何県何番地といえば、自分の内から見当をつけないでもわかるし、人も、何々銀行の頭取だとか、何々中学の校長さんだとかいえば、それでお互いがわかるようになっている。

吉野源三郎「君たちはどう生きるか」

この程度の客観性は、成長に伴いどんな人でも、自己中心的な人でも身に着けて行きます。

自己中心的な人は何が違うかと言えば、自分の損得が判断のベースになっているということです。今風に言えば「今だけ・金だけ・自分だけ」、有体に言えば「自分さえ良ければ」が自己中心性です。

自尊感情とは「『自分さえ良ければ』では、自分自身も生き延びられない。社会は一蓮托生だからこそ、自分も相手も大事にする」という世界観です。時には少しずつ譲り合ったり、我慢することはあっても、「自分の生命や健康や、尊厳を犠牲にはしない」あり方です。

「世界の中心は自分」か「自分は世界の一分子」か

上述の引用は、主人公コペル君に当てた、叔父さんの第一回目のノートの抜粋です。その第一回目のノートは、以下の書き出しで始まります。

潤一君。

今日、君が自動車の中で「人間て、ほんとに分子みたいなものだね。」と言ったとき、君は、自分では氣づかなかったが、ずいぶん本氣だった。君の顔は、僕にはほんとうに美しく見えた。しかし、僕が感動したのは、そればかりではない。ああいう事柄について、君が本氣になって考えるようになったのか、と思ったら、僕はたいへん心を動かされたのだ。

ほんとうに、君の感じたとおり、一人一人の人間はみんな、広いこの世の中の一分子なのだ。みんなが集まって世の中を作っているのだし、みんな世の中の波に動かされて生きているんだ。

「世界の中心は自分である」の世界観の間は、自分の誇大感を打ち砕かれていないので、引用のように「広い世界の一分子だ」と自分を思うことはできません。まるで自分がつまらぬ、取るに足らぬもののように、耐えがたく感じてしまいます。

しかし「世界の中心は自分」は、大変狭い視野になっています。幼児はそれで良くても、大人はそれでは本当の責任を果たせません。

この図のように、広い地点に視野が広がればこそ、相対的に自分の存在は小さくなります。

このようなことは当たり前、と思われるかもしれません。「ああ、本当に、自分は世界の一分子なんだな」と実感するためには、コペル君のように「本氣で考える」必要があります。本氣で考えるとは、自分の考えに責任を持つことです。「誰かやみんなが言ったりしたりすることに、従っておけばいい。合わせておけばいい」は、本氣で考える態度ではありません。これも氣づきにくいですが、責任を放棄した自己中心性の一つなのです。

「世界の一分子である」とは、それぞれ個別の存在でありながら、皆有機的につながっている状態です。即ち「この世に他人事はない」ということです。私たちは身近な人は元より、見ず知らずの人、そして先祖や子孫とも繋がり、影響し合っています。

「対岸の火事」という言葉通り、私たちはある程度、遠い他人の痛みを「他人事のように」思わなければ身が持ちません。自分がやるべきことができなくなります。しかしそのことと、「わが身に降りかかるまで他人事」とは別物です。「こんなことがもし、我が子の身に降りかかったらたまらない」ことは、見ず知らずのお子さんにも起きてはならないことなのです。その意味で「この世に他人事はない」のです。

「この世に他人事はない」と実感できているかどうかが、自己中心の「自分大好き」か、自尊感情の「自分を大切にする」の分かれ目と言っていいでしょう。

自分のニーズのために他人を利用するか、自分が自分に報いるか

自尊感情の「自分を大切にする」は、自立が基礎になっています。「誰かが何とかしてくれる。やるのは私ではない」は、お客さんの生き方です。それは楽かもしれませんが、自分を信じてはいない自己虐待です。

自己中心の「自分大好き」は、自分のニーズのために他人を利用します。そのニーズは、不安の解消のためだったり、虚栄心のためだったりします。「かまいすぎて子供を窒息させる親」も、子供を心配している風を装っていますが、本音は自分の不安を子供に投影しています。自分の不安感の埋め合わせのために、子供が存在しています。親の世間体大事も、親の虚栄心のために子供を利用しています。

自尊感情豊かな人にも、当然不安はあります。悔しさも悲しみも失望もあります。しかしそれらを、「他人を使って」解消しようとはしません。時には共感してもらったり、相談に乗ってもらうことはあってもです。基本は、自発的な努力により、自分が自分に報いようとします。

例えばスポーツの試合で負けた時に「だってしょうがないじゃん」と投げ出すのではなく、「負けた相手を見返してやる」でもありません。「このままで終わってたまるか」と自分に報いるために悔しさを発奮材料にするなどです。「負けた相手を見返してやる」だと、その相手がいなくなれば自分のモチベーションがなくなってしまいます。また悪く作用すれば「足を引っ張ってやれ」になりかねません。「次は負けないよ!」と思うと同時に、相手にも頑張ってほしい、より強くなった相手に今度は自分が勝とうとします。仮に弱った相手を打ち負かしても、安っぽい自己満足を得られるだけです。それを耐えがたく感じるのが、品位の高い自尊感情豊かなあり方です。

「自分のニーズのために他人を利用する」は「奪う/奪われる」の関係性です。しかしwin-loseは少し長い目で見れば、必ずlose-loseになります。win-winでなければ、いつか必ず行き詰ります。だからこそ、まずは先に自分を大切にします。それをしなければ「医者の不養生」のことわざ通りです。「自己否定感の塊の心理セラピスト」に誰もセッションの申し込みをしたいとは思わないのと同じです。境界線を引くことに躊躇がないのも、「奪う/奪われる」は相手のためにもならないと腑落ちしているからです。

私たちは皆影響しあっている

先の引用の通り、私たちは「広い世界の一分子」であればこそ、普段は意識していなくても、お互いに影響し合っています。「影響力のある凄い人が世の中にはいて、平凡で無名の私はそうではない」ではありません。

私たちはしばしば、命令したり脅したり、主張したり交渉したりして、相手を変えよう、変わってもらおうとします。しかし、本人が納得していなければ、遅かれ早かれ元の木阿弥になります。良い事でも悪い事でも、皆「自分がやりたいようにやりたい」のです。

かと言って、私たちは全く自分一人きりで、物事の判断選択をするわけではありません。どんなに「俺は一匹狼だ!」と言っている人でも、環境からの影響は必ず受けています。

人の価値観に変化をもたらす、最もリスクの少ない、しかし時間はかかるやり方は、命令や交渉ではなく、影響だと言われています。誰かのふとした態度が心に深く残り、「あれこそが中々取れない態度だった」とわかることや、他人のきびきびとした立ち居振る舞いにも、知らず知らずのうちに影響を受けます。或いは逆に、駅のホームで「歩きスマホは危険です」と散々アナウンスされても知らぬ存ぜぬの大人達の姿に、子供は否が応でも影響されます。

自尊感情の「自分を大切にする」とは、この影響の重大さに心を開けばこその態度です。「自分さえ良ければ」「私一人位、やってもやらなくても」の正反対の、責任に目覚めた誇り高い生き方そのものなのです。

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第2回 全ての感情を受け止め、否定しないことの重要性
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