クローゼットはその人のPDCAサイクルの縮図・空回りしない人生とは

多忙なのに積みあがった実感がないと疲弊する

「忙しくしていれば何かをやったような氣分になる」誰もが陥ってしまいがちな罠でしょう。社会人になりたての頃や、或いは新しい職場に入ったばかりの頃は、右も左もわかりませんから、言われたことをこなし、とにかく仕事を覚えるので精一杯にどうしてもなります。

しかし仕事の流れが一通り掴めてきたら、やはりそれだけでは足りません。戦略的に考えながら毎日を過ごす必要があります。それをしないと、「降りかかってきた用事をただ片付ける」毎日になり、忙しくしている割には手応えや、自分の成長を感じられなくなって、疲弊してモチベーションが下がってしまいます。

これは仕事のみならず、どんなことでも同じです。

一方で忙しさに振り回されず、経験を自分の氣づきに変えて頭の中を整理し続けられる人もいます。これはいわゆる知能とか、まして学歴などとは関係ありません。意識的に、戦略的に脳を使っているかどうかです。

クローゼットが整理されている人は頭の中も整理されている

ところで、どのようなワードローブを揃えたら良いのかの指南本では、必ずと言って良いほど「クローゼットの中が整理されている人は、人生も上手くいっている。クローゼットの中身がタンスの肥やしに占領されていたり、何をどれくらい持っているか把握できていない人は、人生も空回りしている」と指摘しています。

そしてそれはクローゼットの中に限らず、机の引き出しやパソコンのフォルダー、冷蔵庫の中も同じだと。

私はよそのご家庭のクローゼットや冷蔵庫を見ることはありませんが、きっとそうだろうと思います。心のことは相似形で、頭の中を整理する習慣は、頭の中だけにとどまらず、必ずクローゼットや冷蔵庫の中身にも反映されるからです。

そして整理ができている人は、自分のリソース(資源)を何にどれくらい注げば良いのか常に考えているので、行き当たりばったりで買い物をすることは基本的にしませんし、お金は勿論、有限である家の空間を無駄に使うこともしません。

冒頭の「ただ忙しく走り回っていて、経験値として積みあがった感じがしない」のは、心の部屋が取っ散らかっていて足の踏み場がない、クローゼットがたくさんの服でパンパンになっているのに「着ていく服がない」のと同じことが起きています。

仮に誰かの応援を頼んで、一度クローゼットの整理をしたとしても、自分の頭の中を整理する習慣がなければ、その内元の木阿弥になります。つまるところ、頭の整理はPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを日常的に使っているかどうかに帰するのです。

クローゼットの整理をPDCAサイクルに当てはめると

ここで、クローゼットの整理をPDCAサイクルに当てはめてみます。

Plan(計画):自分の手持ちの服が各シーズンごとにどれくらいあり、どのような状態になってるか。また自分にとって必要な服は何か。服や靴、バッグ等を買うのに、今シーズンはどれくらいの予算を割けるか。また今シーズンの流行の服は自分に合っているかどうか。自分に合わない服は結局着なくなるため、計画性のある人は無闇に流行に乗らない。また、どのような色やデザインが自分に合うか把握しているかどうか。

Do(行動):今日会う人やスケジュール、季節に合わせた日々の服選び。

Check(検証):洗濯後、しまう時に服の状態を確認する。まず傷んでないか。取れなかったシミがないか。或いはタンスの肥やしになっている服がないかどうか。かつてはよく着ていても、好みや流行が変わって着なくなった服がないかどうか。

Action(実践):新たな服を買い足したり、着なくなった服は処分する。

これらは当たり前のようで、PとCを日常的に考え続けていないとやりません。特にP、Planにおいて、ただ闇雲に自分が欲しいだけではなく、自分に必要とされる物、そして予算と収納の限界を考え合わせないと計画的に管理することができません。

そしてこれは、人生全般においても応用されます。PDCAサイクルを効果的に回しているかどうかは、「自分に必要とされるもの」「現状と限界」を把握しているかにかかっていると言えるでしょう。

「自分が必要だと思うもの」「必要とされるけれど認めたくないもの」

私たちは「自分が欲しいもの」「自分が必要だと思うもの」は思いつきやすく、それほど頭を使わずに目標にできます。欲しい服や、必要だと思う服はすぐにわかるようなことです。

但し「必要なもの」には、「自分が必要だと思うもの」の他に、「必要とされているけれど氣づいていない。或いは認めたくないもの」があります。

後者は「複数の他人から度々指摘されるけれど、自分が受け入れたくないこと」や、「同じ失敗を繰り返す原因となっていること」などが該当します。服の例で言えば、ある女性が会社の幹部候補に推薦されながら、役職にふさわしい服ではなく、自分が着たい服を着ていたため、役員たちが難色を示していたという話があります。責任が軽い時は仮に許されても、会社を代表する立場になれば、好きな服だけ着ていて構わないにはやはりなりません。

第三者の目で見ればさもありなんですが、「立場のある人間ほど、自分の好みを超えて必要とされる服装をすることも仕事の一環」と本人が腑落ちしないと、結局「自分が好きな服を着続ける」に戻ってしまいます。

もし「頑張ってる割には何か空回りする」場合は、「必要とされているけれど氣づいていない。或いは認めたくないもの」がないかどうかを検証する、即ちC、Checkをこの視点でできると大切な氣づきを得られ、現状を打破できるでしょう。自分だけではわからない時こそ、自分より見識の高い人に相談してみるのも一つです。これも服の例で言えば、信頼できるパーソナルスタイリストに相談依頼するなどです。

他にも、他人から見れば似合う服でも自分では食わず嫌いをしていて、ワードローブがマンネリ化しているなども同じです。これも例えばお店の人からの提案を受けて、まず試着してみる。その上で自分が氣に入れば買う。そうするとワードローブが新鮮なものになるでしょう。

真の謙虚さとは、褒められた時に「いえいえ、そんな私なんて」と自分を卑下して見せることではなく、「必要とされている、もしくは本当は自分に合っているけれど食わず嫌いで氣づいていない、或いは認めたくないもの」に心を開けることと言えるでしょう。これもまた、勇氣の要ることです。

現状と限界を突き合わせる

「欲しい服」や「必要だと思う服」があっても、クローゼットの現状や、金銭的な限界を合わせて考えないと「買った服が紙袋に入ったまま、床に並んでいる」「行き当たりばったりで買った服のカードの支払いに追われる」にともするとなりかねません。

服なら「後先考えずに買う方が悪い」と思えても、他のことでは「現状や限界を無視して、自分が思う『こうあるべき』で突っ走る」が実はよく起きています。

PDCAサイクルを回すとは、自分がどうしたいか、何を大事にするのかの軸はぶらさず、なおかつ常に現状と照らし合わせ、自分や周囲の限界を加味した上で判断選択していくことです。

自分の価値観(何が大事か)・信念(物事はどうあるべきか)は、アイデンティティの根幹をなすものです。ですので、これを否定すると自分自身を否定することになります。

この価値観・信念と、自分の周囲が噛み合わない、ぶつかった時に葛藤が生じます。職場の部下・後輩、もしくは自分の子供に「これが大事だ、こうあってほしい」と望むのは当然のことです。相手が同僚や、上司になる場合もあるでしょう。或いは世間一般の人々に「もっとこうあってほしい」と望むのも、信念などなくただ流されて、人に合わせておけばよいとぼんやり生きている人は最初から考えません。

誰しもついつい自分を標準だと思い、「これくらいわかって当然」といつの間にか相手に対して期待し、要求してしまうものでしょう。しかし、現実はそうではなく、知性、教養、思考力、理解力、感性、共感性、視野の広さは千差万別です。そしてこの当たり前のことを、私たちは本当にしばしば忘れます。

標題の現状と限界とは、自分と相手の現状に何度でも立ち返ること、そして限界は能力的なことだけでなく、立場の限界を受け入れることも含みます。

私自身の例で言うと、SNSで繋がっているのは同業者が多いのですが、私の目から見て「心理関係者がそんなことをやっていいのか!」と思うことを相手がやっている、その記事がたまたま私の目に留まると、パソコンのモニターの前で勝手にイライラしています。私の信念通りに相手がしていないので「そんなんでいいのか」と怒っているのですが、大して親しい間柄でもなければ「それってどうかと思うよ」とも言えず、黙っているしかありません。

「この人、そんな人だと思わなかった!」の主語は私です。その記事をUPするずっと以前から「そんな人」だったという事実、そして私にはそれをどうにもできない限界を受け入れていくしかありません。これを面倒でも一回一回やらないと、買ってきた服がクローゼットに入らないのでへそを曲げて怒っているのと同じく、パソコンの前でプリプリ怒っているという、無駄で馬鹿げたことをずっとやり続けてしまいます。そしてそれに自分では氣づきません。

相手の現状、そして私の立場の限界を受け入れた上で、「その人とどこまで付き合うのか」のP、Planを改めて考える、そして再度PDCAサイクルを回していかないと、「どうにもできない相手の悪口をずっと言い続ける」という不毛なことに陥ってしまうのです。

クローゼットも頭や心もPDCAサイクルで整理

もし、ご自身のクローゼットが「タンスの肥やしに占領されている。数はあるのに『着ていく服』がない」になっていたら、一度PDCAサイクルに沿って整理して頂ければと思います。

また、「なるほど、私のクローゼットが整理されているのは、余り意識していなかったけれどPDCAサイクルを回していたからなんだな」と氣づかれた方は、日常の他の分野、人間関係や仕事などで是非応用してみて下さい。

新たなことにどんどんチャレンジできる人、或いは何か問題が持ち上がった時にオタオタせずに落ち着いている人は、「どんなことも応用」と腑落ちしています。クローゼットの整理も、例えば大きな会社を経営することも、根は一緒なのです。逆は必ずしも真なりではありませんが、会社経営が上手くいっている人が、クローゼットがタンスの肥やしに占領されているということはありません。

価値観・信念を明確にし、それに沿って一生懸命生きている人ほど、葛藤は増えます。悔しい思い、時には失望や遣る瀬無さを抱えながら、それらをなかったことにはせず、現状と限界を踏まえ、自分が必要と思うことの他に、自分に必要とされることにも心を開いて、新たなPDCAサイクルを回していく、これが本当の前向きに生きる姿だと私は考えています。

【音声版・自尊感情を高める習慣・6回コース】

1回約20分、6回コースの音声教材です。

第1回 自尊感情とは何か。何故大事か
第2回 全ての感情を受け止め、否定しないことの重要性
第3回 「何が嫌だったか」を自分に質問する。目的語を補う
第4回 期待通りに成らない現実を受け入れざるを得ない時
第5回 小さな一歩を踏み出す・最低限のラインを決める
第6回 人生が変わるのは知識ではなく氣づき

第1回目は無料で提供しています。まず一週間、毎日聴き、ワークに取り組んでみて下さい。その後更に日常の中で実践してみたくなったら、6回分の音声教材(税込5500円)をご購入下さい。

🔗第1回・要約・氣づきメモ

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    生きづらい貴方へ

    自尊感情(self-esteem)とは「かけがえのなさ」。そのままの自分で、かけがえがないと思えてこそ、自分も他人も大切にできます。自尊感情を高め、人と比べない、自分にダメ出ししない、依存も支配も執着も、しない、させない、されない自分に。