「あの人、どうにかして!」と悲鳴を上げたくなる心理ゲームとは
「人を変えようとしてはいけない」・・・確かにその通りですが、世の中には「あの人、どうにかして!」と悲鳴を上げたくなる人がやはりいます。
真に自立し、互いを尊重できる人同士なら、性格的な相性や、考え方が少々合わないだけではこうはなりません。
「あの人、どうにかして!」とつい思うのは、「かまってちゃん」「かまわせてちゃん」が「心理ゲーム」を仕掛け、こちらの境界線をひっかきまわそうとするからです。
勿論そうではない例ー本人はいたってマイペース。意図的にひっかきまわそうとはしていない。でもマイペース過ぎて協調性が乱れる、などーもあります。
しかし今回は、多くの人が一度は悩んだことのある「心理ゲーム」について取り上げていきます。
「心理ゲーム」とはエリック・バーンの交流分析で分類された、「不快な結末を引き起こす」人間関係のパターンです。
自分を大切にできない人は、「かまってもらうこと」またその裏返しの「かまわせてもらうこと」で、その埋め合わせをしようとします。
親から充分に承認されていないと感じた子供が、「わざと怒られるようなこと」をして関心を引こうとします。そうすると「無視されるよりはまし」な状況が手に入ります。
そのパターンが大人になっても続いてしまう、心理ゲームとはざっくりと言うとこうしたことです。
しっかりと承認され、愛され、信頼されて育った子供は、このようなことをする必要はありません。
また、親から愛されなくても、自分で自分を大切にし続けた人も、このようなゲームをしかけたりはしません。そんなことをする自分が嫌だからです。
心理ゲームの代表的な種類
心理ゲームは多岐にわたりますが、ここでは代表的な例を挙げます。
- キック・ミー(私を蹴って下さい)
わざと遅刻をする、ルールや締め切りを守らない、何度注意されても同じようなクレームを起こす、など。
「周囲の人をわざと怒らせて」関心を引こうとしています。 - 「はい、でも」(水掛け論)
悩みごとを持ちかけながら、「こうしたらどう?」と提案されると「そうですね、でも・・・」を繰り返します。
悩んでいるようだけれど、改善する氣は本当のところはありません。 - あらさがし(揚げ足取り)
ささいなことをいちいち否定したり、揚げ足を取ってきます。
しつこく否定し続けることで、相手が根負けして自分の言う通りにすると、自分が優位に立てた氣分になります。 - 義足
「こんなにかわいそうな私」を演出します。実際に無意識に怪我を繰り返し、「大丈夫?」と氣遣ってもらったり、本来やるべきことを免除されようとすることもあります。 - 大騒ぎ
「もう会社辞める!」「もう死ぬ!」「私なんてもうダメ!」・・・「辞めないで!」「大丈夫?しっかりして!」「そんなことないわよ!」と周囲の同情を引こうとします。
同情を引くことが目的なので、「はい、でも」と同じで、自分が改善する氣はありません。 - あなたのせいでこうなった(責任転嫁)
自分の非を認めず、責任転嫁します。理性的に現実的に解決をしようとするのではなく、感情的に責め立てるだけです。
家庭や職場での暴君タイプです。 - あなたを何とかしてあげたいんだ(過剰な世話焼き)
相手が求めていないのに、過剰な世話を焼きたがります。相手が断ると傷つき、怒ったり泣いたりして罪悪感に訴えようとします。
以前の記事で書いた「感謝アピール」や「惚れさせることが目的」も心理ゲームです。
要は「他人を使い、振り回して、自分の不全感を埋め合わせようとする。『ほれぼれとする自分』の演出のために他人を利用する」のは全て心理ゲームだ、と考えて良いでしょう。
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カモにされやすいのは反応的な人
心理ゲームは、まずは「カモを見つける」ところから始まっています。
かまってちゃんはかまってほしいわけですから、反応しやすい人をカモに選びます。
氣持ちが優しく、同情しやすい人、人のために一生懸命になりやすい人、従順な人、また逆にカチンと来やすい怒りっぽい人などがカモにされがちです。
自分より弱い立場の人をカモにすることもありますし、逆に「偉い人」にゲームを仕掛けて優越感に浸ることもあります。
余り感情的な反応を出さない人、冷静沈着で合理的、論理的、理性的な人、ドライでクールな人は避けられます。
「相手は解決を求めていない、心理ゲームを仕掛けてきている」とわかったら、自分の中の「冷静沈着で、合理的」なパート(部分)にアクセスして、それを引き出すと効果的です。
勿論、心理ゲームを仕掛けてくる人には関わらないのが一番です。しかし、家族、親戚、職場の人など「関わらざるを得ない」こともあります。
具体的な方法はケースバイケースなので、今回は原則となる心構えを以下に挙げます。
対処の原則①「どうにかしてあげたい」を改める
人間は辛そうな人を見ると、反射的に「どうにかしてあげたい」と思いがちです。
緊急時、肉体的生命的危機が迫っている時(電車の中で苦しそうな人に席を譲る、など)は別ですが、平時の、特に精神的なことには「どうにかしてあげたい、あげなくっちゃ」は寧ろ厳禁です。
「どうにかしてあげよう」はこちらが相手を下に見ている、思い上がりでしかありません。
自分を変えられるのは自分だけです。そして禁煙でもダイエットでも婚活でも、本人がそれを望まなければ実現しません。
口では自信がないとか辛いとか言っていても、「自信をつけたい」「幸せになりたい」と本人が望んでいるかどうかは、また違います。配偶者や職場の悪口を延々と言い続けていても、本音の本音は「その状態が心地よい」ことはいくらでもあります。有体に言えば、悲劇のヒロインになっておく方が楽、そして優越感に浸れた上に可哀そうがってもらえる、ということです。
相手が「自信をつけたい」「幸せになりたい」と口先ではなく心から望まなければ、こちらが「ああしたら?」「こうしたら?」とアドバイスをしても、行動に移すという面倒くさいことはしません。
心理ゲームとは「相手を振り回すこと」ですから、口では「私はダメだ」のなんだの言っても、本当の反省はしようとはしません。そしてまた、真の反省と改善は実は難しく、皆が皆することではないのです。
心理ゲームに巻き込まれ「こんなに一生懸命してあげたのに!」と悔しい思いをし、そして「もうこんな思いはしたくない!」のなら、相手を「助け出そうとして」これまで本当に良かったことがあったかどうかを振り返ることから始めると良いでしょう。簡単に言えば「蒔いた種は相手に刈り取らせる」です。
対処の原則② 事実だけにペーシングし、相手にボールを返す
心理ゲームに巻き込まれないためには「良い悪い、正しい正しくないの議論にしない、させない」のが大鉄則です。議論になってしまうと相手に「はい、でも」「あらさがし(揚げ足取り)」をさせるチャンスを与えてしまいます。
そのために、こちらが返す言葉に評価を加えず、事実だけを返すことが基本になります。
そして①のように、「解決は相手がするもの」このスタンスを決して崩さないことが重要です。
《例》(A:ゲームを仕掛ける方 B:仕掛けられた方)
A:「私何やってもダメなんです。自信が持てなくて・・きっとみんなにも迷惑かけてるよね」
(「そんなことないわよ!だれも迷惑だなんて思ってないわよ!」だとまんまとゲームにはまってしまいます。「でも・・・」と同じ話が延々と繰り返されます)
B:「迷惑掛けてるかもって、氣にしてるんだ」
(「氣にしている」ことは事実です)
A:「うん、そう。私なんか顔出さない方がいいかしら?」
(「そんなことないわよ!」だとゲームにはまります)
B:「顔を出すか出さないか、迷ってる?」
(「迷っている」と相手の行動に焦点を当てます)
A:「そうね・・・あなたはどう?迷惑じゃない?」
B:「私は別に・・(と「迷惑か迷惑でないか」の評価を避けます。「迷惑だ」とも言えませんし「迷惑ではない」と言うと「でも・・・」が始まるからです)。あなたが心地よくいられる方を選んだらいいと思うわよ」
(と相手の判断・選択に委ねます)
対処の原則③ 体面を傷つけず、味を占めさせない
心理ゲームを仕掛ける人は「キック・ミー」のように自分が傷ついても関心を引きたがります。
相手の体面を傷つけないのは思いやりでもありますが、「ゲームに乗らない」ことそのものでもあります。
ゲームにうっかり乗ってしまうと、エネルギーを奪われ、不快な氣持ちが残ります。そして自分が嫌な氣持ちになるのと同時に「相手に味を占めさせる」ことになります。
味を占めさせず、「この人はゲームに乗らない人だ」と思わせることが最大の防御です。
そうなると、その人との関係は終わるかもしれません。
関係を断絶した、と思うのが苦しい時は「今は一旦終わらせている」と思っても良いでしょう。何十年か先には、どうなっているかはわからないことですから。
そして関係が続くことだけが、常に必ずしも愛ではありません。「味を占めさせない」ことも、相手はそれを望まなかったとしても、関係が終わったとしても、大きな観点に立てばそれも愛なのです。
もし「味を占めさせない」ことに罪悪感を感じていたり、逆切れされるのを恐れているとしたら、それは自分の自尊感情が不足しているサインです。そして自尊感情が不足している人ほど、カモにされやすいです。いい子でいたい、人に尽くせば自分は受け入れてもらえる、「○○さんて冷たいのね」と言われるのが怖い、等々がある場合は要注意です。
即ち対処の3原則を身に着けるには、いずれも自尊感情の高さが問われます。
「『どうにかしてあげたい』を改める」は、自分の限界をわきまえること、
「事実だけにペーシングし、相手にボールを返す」は、自分の心のあり方は自分にしか選べないということ、
「体面を傷つけず、味を占めさせない」は、評価評判という見返りを求めず、孤独に耐えられること、
自分自身が、常日頃からこれらを生きているかが問われるのです。