この本の内容そのものについては、以下に貼付したTEDのプレゼンテーション動画が、非常に端的にまとめています。素晴らしいプレゼンテーションなので、ぜひ一度ご覧頂ければと思います。
そして、ここでは私達がしばしば悩む、どうすればモチベーションを保てるか、何が行動の動機になればよいのかについて述べてみたいと思います。
何にせよ努力は大切な事だけれども、それが「自分がまだ不完全だから(完全になる日は永遠に来ないのに!)頑張らなくては」という焦りが動機になっていると、そのこと自体が自分を追い詰めてしまいます。
結局はいつか破綻し、ともすると「努力が憎く」なりかねません。
子供が勉強嫌いになってしまうのは、「勉強する」→「何故なら自分は不完全だから」→「自分は不完全だ」という暗示が入ってしまったからかもしれません。
元々子どもたちは、知的好奇心が大人よりはるかに旺盛。「あれは何?」「これは何?」「何でなの?」と周囲の大人を質問攻めにします。子どもたちにとって新しい世界を知っていくことは、本当はとてもワクワクする冒険だったはずです。
「WHYから始めよ!」ではスティーブ・ジョブズ、ライト兄弟、キング牧師等社会をインスパイアした(鼓舞した)リーダーたちを数多く取り上げています。
勿論彼らも、驚異的な努力をすればこそ、社会を変革する偉業を成し遂げました。
彼らの動機は決して「自分が不完全だから」ではありませんでした。
勿論、彼らも皆、私たちと全く同様に多くの欠点を抱えていましたが、彼らの焦点はそこには当たっていなかったのです。
「Think different !」アップル社
「有人飛行機は世界を変える」ライト兄弟
「神の法と人の法が一致しない限り、世界は公平にならない」キング牧師
彼らは自分の「信念」にだけ焦点を当て、そこから行動を起こしました。
何故、それをするのか。
世界に向かって、どんな価値を生み出したいのか。
彼らは文字通り、その信念に殉じました。
キング牧師はあの有名な「私には夢がある」の演説時、弱冠35歳でした。しかし、まるで50歳くらいに見える貫禄がありました。そして39歳の若さで暗殺されました。キング牧師は自分が暗殺されるであろうことを、わかっていたそうです。
ライト兄弟は自転車屋さんで、レジの中のその日の売り上げから部品を買って、飛行機の実験を繰り返しました。彼らは人・物・金の全てが乏しかった。しかしその情熱が、資金が潤沢なライバルをはるかに凌駕していました。彼らは「朝が来るのが待ち遠しかった」のだそうです。
下の図はサイモン・シネックが考案した「ゴールデンサークル」です。
この「何故」は言語をもたない大脳辺縁系から発せられます。
だからこそ、曖昧になりがちです。
そして人間の脳は、曖昧さを嫌います。脳が曖昧なものを嫌い、よりはっきりしたものを好む、この特性を最もよく知り、活用しているのは広告業者です。
理念、目的、信念を、日々刷新する姿勢を失うと、目標(目標は指標であって、目的とは異なります)の目的化や、手段の目的化が起こりがちです。
目標も手段も、曖昧ではなく目に見えるものですから、脳がそれに依存してしまいます。
そして皮肉な事に、目的、WHYを失ったとたんに、人間の脳はエネルギーが枯渇してしまいます。この円の中の、深い部分である大脳辺縁系(感情)から動かず、浅い部分の大脳新皮質(理屈、損得)だけで動かそうとするから無理が生じてしまいます。
創業者が引退すると、しばしば業績が低下するのは、このWHYを体現していた人を失うからでしょう。
創業者のWHYが次世代に継承されていないと、こういうことが起こります。
そしてこの大脳辺縁系は情動をつかさどるところ。
つまり感情です。
感情が動くかどうか、感情が味方してくれるか。
自分がどんな価値を実現したいのかは、自分だけが決められることです。
感動することは勿論、傷つくことにおいてさえ(傷つく、ということは感情が動くことですから)、私たちはその「自分だけの価値」を発見することができます。
日々、感情が動く物事に、ただただ流されるのではなく、そこから一歩外に出てて、「自分は何に感情が動いたのか」を自問する習慣があるかどうか、自分の日々の行動が、一貫してWHYから始まっているかどうか。
他人を観察する時も、「この人のWHYは何か。そして一貫性があるかどうか」が真の関係作りに役立つでしょう。