潜在意識の特徴

潜在意識の特徴 ⑪人が「お説教」では変わらない理由

脳は「現実かそうでないか」「正しいか正しくないか」をインプットするのではなく

「男はみんな浮気する」
「太ったら嫌われる」
「学校に行けばいじめられる」

・・・このような言葉を聞くと、人はえてして

「皆が皆浮気するわけじゃないよ!」
「太っていても好かれている人はいるよ!」
「優しいクラスメートだっているよ!」

などと「相手を救おうとして」お説教をしたくなります。
しかし、これで解決するのなら、心理セラピーはこの世に必要ありません。

勿論現実には、全ての男性が浮気(何をもって浮気とするのかは今はおいておきます)するわけではありませんし、太めの体形の人気者はたくさんいますし、どんな学校にもいじめなどしない心優しい生徒はいるでしょう。

相手も「頭では」この現実を理解できないわけではありません。しかし心では納得出来ません。納得できないと行動が変わらず、行動が変わらないとその人の人生に変化は起きません。

一体何故でしょうか・・・?
それは人間の脳が「正しいか、正しくないか」「現実か、そうでないのか」ではなく、「生き延びるために次は何をしたらいいのか」を学習し続けるためだからです。

そして「今の自分にとって生き延びるために最善の方法は何か」を探し出し、インプットし続けます。

「男はみんな浮気する」も
「太ったら嫌われる」も
「学校に行けばいじめられる」も

その人が生き延びるために選んだ、現時点での最善の学習の成果なのです。
最善ですから、ひとつです。「男はみんな浮気する」と同時に「浮気しない人もいる」とは考えませんし、「太ったら嫌われる」と同時に「太っていても好かれる」とは考えません。

脳の学習の4つの動機

脳は「生き延びるため」の学習をし続けます。その動機は4つ、「食欲を満たす」「性欲を満たす」「恐怖を避ける」「好奇心を満たす」です。
子供に勉強をさせるのに、「宿題を終えたらおやつを与える」のは「食欲を満たす」動機で学ばせようとしています。
「脅して勉強させる」のは「恐怖を避ける」動機を使っています。
賢い教師はおやつで釣ることも、脅すこともせず、「好奇心を刺激して」子供たちを学びに向かわせます。

冒頭にあげたような信念は、「恐怖を避ける」ために学習して得たものです。
ですから、お説教でこの信念を取り除こうとされると、「生き延びていけない!」恐怖を脳は感じてしまいます。お説教されればされるほど、恐怖を避けるためにその信念に余計にしがみつくのはそのためです。

「男はみんな浮気するものだ。(だから恋愛なんてもうこりごり)」と思っていれば、恋愛しなければ「浮気される恐怖」を避けることが出来ます。
「太ったら嫌われる。(だから痩せていれば嫌われない)」と思っていれば、体重を増やさなければ「嫌われる恐怖」を避けることが出来ます。
「学校に行けばいじめられる(だから学校は恐ろしいところだ)」と思っていれば、学校に行きさえしなければ「いじめられる恐怖」を避けることが出来ます。

そして恐怖を避けて、何とか生き延びようとしているのです。

まずは相手が感じた「恐怖」を理解すること

冒頭にあげた信念を持っている人たちは、現実にそれが起こったかどうかは別として、「浮気された恐怖」「(太ったせいで)嫌われた恐怖」「学校でいじめられた恐怖」を脳が感じてしまっています。
(「太ったせいで他人から嫌われた」ことは、実際には起きていない方が多いようです。むしろ他ならぬ自分自身が「太っている自分を受け入れられない」ため、「太ると受け入れられない、嫌われる」恐怖を自分で作り上げているケースがほとんどです。)

相手に同意や同情しなくて構わないのです。同意するとこれらの制限的な信念を却って強化してしまいます。また同情はともすると憐憫に陥りやすく、「上から目線」になりかねません。理解のない同情は、「この人、同情してくれるけれど、理解してはくれない!」と却って不信感を生むこともあります。

「相手の脳が恐怖を感じている」事実を理解し、受け入れる、共感が最も必要です。

相手が「よりよく生き延びられる新しい選択肢」を望んでいるか

人が新しい選択肢や信念を受け入れるのは、「こちらの方が自分がよりよく生き延びられる」とその人の脳が納得した時だけです。

そしてそれは、「自分を制限するような生き方ではなく、可能性を広げられるような生き方をしたい。そしてそれが自分には出来る」という「好奇心」が刺激されることが必要です。

相手が「新しい選択肢」を望んでいないうちは、お説教も提案もアドバイスも、こちらがどんなに善意のつもりであっても逆効果にしかなりません(人間関係のこじれの大半は、悪意のあるいじわるよりも、この善意のつもりのお説教や提案・アドバイスだと思われます)。

「生き延びるために最善を尽くしている」ことを否定されたと受け取ってしまうからです。

ただ、親御さんがお子さんの将来を心配して学校に行ってほしい、勉強してほしいのなら、その「心配している気持ち」は親御さんのものです。お子さんが感じている「恐怖」と同様に尊重されるものです。
そしてそれをどう伝えるのかは、お子さんの問題ではなく、親御さんのチャレンジ・課題となります。

平時は「相手を救おうとしてはいけない」

緊急時、相手の命の危機が差し迫っている時は別ですが、平時は「相手を直接救おうとしてはいけない」が対人援助の大鉄則です。

「直接救おうとする」ことは「相手を変えようとすること」になりかねません。
「あんたわかってないようだから、私よりも無力だから、私の言う通りにしておけばいいのよ」という上から目線のメッセージを受け取ってしまいかねないのです。
そうすると相手の自尊心は著しく傷つきます。反発するガッツがあればまだいいのですが、依存を生み出すこともあり得ます。

「わたし・・・ただ、誰かのお役に立ちたいんです」
「きとくなことねえ。他のご婦人がたは優越感と暇つぶしのためにやってるわ」
「でも・・・それで少しでも恵まれない人たちが助かるのなら・・」
「かえって毒になることもあるわ。そう!彼らから気力とプライドを奪っているのはわたしたちかもしれなくてよ」

(池田理代子「オルフェウスの窓」より)

相手の脳が感じた「恐怖」を理解し、「よりよく生き延びられる新しい選択肢」を望むまで待つこと。
そして相手が求めた時に初めて、自分の引き出しを開けて提案をする。
家族であれ、セラピストであれ、他人がやっていいのはここまでなのです。

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