ラポール≠信頼関係
NLPやその他のコミュニケーションのセミナーの告知で「一瞬で信頼関係が築けます」と言った宣伝文句に、決して引っかかってはいけません。
対人緊張・対人恐怖など人を信じられず、人間関係を築くことに困難を感じている人たちが
「何とかしなくちゃ・・・!」の一心で、
こうしたセミナー(しばしば高額です。だからこそ「こんな高いお金を払うのだから、効果があるのかも」と思ってしまいがちです)を受講することがあります。
これらのセミナーで、講師が伝えられるのは「ラポール」と言う「息が合った状態」「互いの脳の、同じ神経回路に電気が走っている、シンクロしている状態」を、素早く作る「方法」だけです。
具体的には、同じ姿勢で座りましょう、相手を見て、タイミングを合わせてうなづきましょう、相手の言葉をそのまま繰り返しましょう等々です。
このラポールは信頼関係のほんの入り口に過ぎません。
またどんなラポール形成の名手でも、「誰に対しても、どんな場合でも」一瞬でラポール形成が出来ることはあり得ません。
ラポール形成と、信頼関係を築くことは全く別のものです。詐欺師やナンパ師も、このラポール形成能力に大変長けています。
そして残念なことに、講師自らラポール形成能力と、信頼関係を築くことや、人の痛みがわかるという真の共感能力とを履き違えていることが非常に多いです。
「一瞬でラポールを築く」ことはあり得ます。
しかしどんな人間関係も、信頼関係を築くには、責任を担うこと、嘘をつかず約束を守ることなどを通し、誠実さが互いに伝わり合う、地道なプロセスが必要です。努力と時間が必要で、また壊れる時は一瞬です。傷ついた信頼関係を修復するには、築いた時以上の努力とエネルギーが必要です。
「一瞬で信頼関係が築けます」のうたい文句は、その講師の無知・無理解か、人の弱みにつけこんだ悪質な歪曲かのいずれかです。
いずれにせよ、受講はお勧めできません。
人が怖くなくなり、信頼関係を築けるようになるには多くのプロセスが必要
人が怖い、人を信じられないのはラポール形成云々とは全く違う次元のことです。
そしてその原因は千差万別です。一律に教わるセミナーでどうこうなるものではありません。
自分が何故人を恐れるようになったのか、何に囚われているのかに向き合い、そして何よりも、誰が何と言おうと自分は自分で良いと自然に思えるようになる、このプロセスに最初から決まった答えはありません。
クライアント様一人一人と向き合い、お互いに手探りしながら、プロセスを探し出す、紆余曲折も当然ある、粘り強さが求められます。
クライアント様にも、相応の投げ出さない覚悟が必要です。しかしその過程において、多くの気づきを得ていかれます。その気づきは、ご自身がつかみ取ること。外側から与えられる知識や技術ではありません。