感謝という境地③ 努力は必要だけれど、すべてでもない

自分の意識を超えたところで、物事は進んでいる

努力して結果を出した自負が強い人の方が、案外、感謝という境地には達しづらいかもしれません。

努力が不要ということはありませんが、物事は自分の努力だけではどうにもならない側面があります。

どんな心を込めたいか
何が譲れないか
何に価値を置いているのか

これらは自分にしか決められません。

日々それを生きる一方で、水面下では自分にはわからないところで物事は進行しています。

例えば、弊社の或るクライアント様は、弊社のサイトを見つけてから一年間、心理セラピーを受けるかどうか迷ったそうです。

その一年間は、その人の存在すら私は知らないままでした。

ただ私の価値観・信念を、弊社のサイトに縷々綴っていなければ、そのクライアント様との出会いはありませんでした。また万が一、その間に私がこの仕事を辞めてしまったら、やはりその方とは出会っていません。

自分の意識が及ばぬところで、かなりの多くのことが実は起こり、進んでいます。

また例えば、インターネットや、弊社が使用しているワードプレスなどは、当然のことながら私が創ったものではありません。必須の仕事道具であるパソコンもそうです。
また弊社が最も大事にしている自尊感情(self-esteem)の概念も、私が発明したものではありません。

こうした私の意志、私の意識が及んではいない、無数の有形無形の物事に支えられて、私の仕事や日常生活は成り立っています。

一方で、人は自分の意識が切り取った世界が、全世界だといつの間にか思いがちです。意識してないものは、その人にとっては「ないのと同じ」になっています。しかし現実はそうではありません。

「私が何とかしなくちゃ!」は、責任感の強さとも言えますが、思い上がりとも言えます。

孫悟空が「俺は世界を征服できるんだ!」と自慢げに筋斗雲に乗り、世界の果ての五つの山の、真ん中の一番高い山に「孫悟空見参」と書いて戻ってきたら、それはお釈迦様の中指でした。

「ああ、私が何とかしなくちゃ!」と自分の意志だけで「世界を思い通りに動かそう」とするのは、孫悟空が「俺は世界を征服できる!」と息巻いていたのと一緒です。

自分の意識が及ばぬ世界の大きさを、イメージできるかどうか。意識の及ばぬ大きな世界が、自分を支えていると感じられるかどうかです。

「私に不快を味わわさせないで!」を望んでいる間は

ただしかし、何もせず「幸せがお膳立てされるのを待っている」だけでは、外側の事象に振り回されっぱなしです。

自己中=わがまま、だけでは決してありません。自己中心性はナルシシズムと相まって、どんな人の心にも忍び込ます。

コップの水をこぼしただけで、「ああ、私は情けない」と自分を責めるのは、ナルシシズムが背景にあります。
「コップの水をこぼしたりしない私でなければ、愛さない、認めない」

不快の感情に耐える力が弱く、自我という調整弁、即ち心の器がもろく、打たれ弱いとこうなりやすいです。

そしてこのナルシシズムから来る打たれ弱さが、ひいては「幸せとはお膳立てされるもの」になります。

「何としても私に不快を味わわさせないで!」
「いや、どうしたってそれは無理です」

この状態では、心理セラピーにおいても、人生全般においても、何をやっても堂々巡りになります。

感謝という境地、これは「私に不快を味わわさせないで!」を望んでいる限り至ることはないでしょう。

失望も、憤りも、悲しみも、生きている限りついて回ります。

「○○さえ(何かの症状、嫌なあの人、ダメな自分、その他もろもろ)さえなくなれば、私は幸福になれる。私が不幸なのは○○のせいだ」と思っている間は、決して幸福にはなりません。感謝の境地とは、様々な問題や不快があっても、感謝ができることです。そして同時に、これらの問題を解決していこうとする姿勢に支えられてのものです。

自尊感情を高める最初の習慣に「ネガティブな感情を受け止める」を挙げ、またほとんどのクライアント様に、まずこのことをお願いしているのは、世界の大きさを受け入れていくためでもあります。

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感謝という境地は、自分の限界、自分の意識が及ばない世界の大きさを受け入れつつ、それでもなお、努力をやめない人のみが達することができるのだと思います。

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第2回 全ての感情を受け止め、否定しないことの重要性
第3回 「何が嫌だったか」を自分に質問する。目的語を補う
第4回 期待通りに成らない現実を受け入れざるを得ない時
第5回 小さな一歩を踏み出す・最低限のラインを決める
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